5月号
里親ケースワーカーの 〝ちょっといい お話〟
絵本『ドーンさんのいえ』を通して
昨年、大阪府の豊中市立野畑小学校の先生からお電話がありました。その先生は3年前から“命の授業”の一環として、当協会が出版した『ドーンさんのいえ』という絵本を教材にしているということでした。ドーンさんは、アメリカでこれまで3千人以上の子どもを育ててきた里親です。ドーンさんは看護師で医療行為ができるので、病気や障がいによって親と暮らせない子どもたちを家に引き取っています。
私は実際にシアトルのドーンさんの家を訪ねたことがありますので、先生はそのことを子どもたちに話してほしいと依頼してこられました。私はそのとき出会った、やはりHIVに母子感染し親と暮らせず、乳児のときにドーンさんの家に引き取られたアントニアという女の子の話をしました。彼女は8歳8ヶ月で亡くなりましたが、病院ではなく里親の家で、ドーンさんや他の里子たちに愛され、大切にされて残された日々を過ごすことができたのだということがわかりました。HIVは薬によって従来より長く生きられるようになったとはいうものの、まだ偏見があります。そういった子どもたちが、例え短い命だとしても誰かに愛され、必要とされて生きることは、本当に大切なことです。ドーンさんは、「エイズの子どもを預かって良かったことは何か」という質問に対して「その子の短い時間の中で、人として生きることの喜びを味わわせてあげられたこと、幸せを与えることができたことです」と答えています。
私の講演は、小学5年生156人の子どもたちが熱心に聞いてくれましたし、その中にはストレッチャーに乗った難病の子どもや、障がいを持った子どももいました。「苦しんでいる子どもたちが自分たちの周りにもいて、自分達よりもその子どもたちがもっと大切にされることがどんなに大事なことなのかがわかりました」という感想文を送ってくれるなど、小学生の子どもたちが深く感動してくれたことが大変嬉しかったです。
『ドーンさんのいえ』を購入ご希望の方は、協会までお問い合せください。
橋本 明さん
〈家庭養護促進協会事務局長〉
社団法人 家庭養護促進協会
TEL 078・341・5046
神戸市中央区橘通3-4-1
神戸市総合福祉センター2階