2012年
6月号

地域と家庭で健康づくり

カテゴリ:教育・スポーツ

神戸市看護大学
学長 金川 克子さん

「神戸市看護大学」は1996年に開学した若い大学。地域社会の保健・医療・福祉に貢献できる人材育成を目指している。「皆さんにもっとこの大学のことを知ってもらいたい」と話す金川学長にお聞きした。

臨床に根ざして、地域に貢献

―開学にあたっては阪神・淡路大震災の教訓も生かされたのでしょうか。
金川 私自身は開学当時から関わって震災を経験したわけではないのですが、当時は外部の人間として、大きな被害を受けた神戸で開学できるのだろうか?と心配していました。結果的に震災の翌年に復興への思いを込めて開学し、復興とともに歩むことになりました。
―病院や医療機関との連携・協力を重視しているということですが、具体的には?
金川 教育と現場の良い関係は大切です。具体的には、私どもと病院の看護職員、特にリーダーとのコミュニケーション手段として臨床教授を引き受けていただき、実習をお願いしています。また、昨年から臨床教授と本学教員との会議も設置しました。臨床実習を含む看護教育を、どういう形で向上できるかをお互いに話し合おうというものです。
現場レベルでは、中央市民病院、西市民病院、西神戸医療センターの3病院へ教員が出かけ、実習の担当職員と1年に2回、実習協議会を開設し、実習の進め方や目的についてのお願い、1年終えてからは実習報告、また各病棟・部所担当者も話し合いを行っています。
―3病院から大学へ講師派遣というケースもあるのですか。
金川 臨床領域で大切な部分については、病院の看護職に特別講師として大学に来て授業や演習指導いただいたりすることはあります。また、大学内の倫理審査会には外部メンバーとして加わっていただいています。
―地域との交流はどのように?
金川 神戸市西区役所と当大学は協定をむすび、それに従って地域に根ざした色々な活動を行っています。さらに、心と体の健康に関する相談窓口「まちの保健室」や、神戸市の子育て支援の一環として、今年の4月に子育てひろば「コラボカフェ」を開設しています。

充実した教育内容と高い就職率

―2005年、全国の公立大学に先駆けて開設された助産学専攻科の特徴は?
金川 教育は1年間だけなのですが、「授業はきつかったけれど、きちんとしたものだった」と卒業生から評価を受けています。特に実習は充実していて、産まれた子どもさんの継続実習を取り入れています。国家試験の合格率もほぼ100%です。そういう意味でも教育、実習、演習、講義も含め、全国的にも先端をいっていると思っています。
―卒業後、就職率の高さには定評がありますが、看護師は病院へ、保健師、助産師それぞれの就職先は?
金川 保健師は主に行政看護、例えば保健所、各区の保健センターなどがありますが、数は限られています。一方、病院に保健師として就職した場合は、患者さんの相談役や、病院と地域との連携をコーディネートするという役目もあります。助産師は病院内の産科のほか、助産院勤務や開業というケースもあります。
―男子学生もちらほら見かけますが、男性看護師の需要は増えているのですか。
金川 男性看護師は全国的にみても、正看護師で約5%、准看護師で約6%とまだまだ少ないですね。この大学の学生でみても、入学・編入生120名中、最も多い年でも10名、まだまだです。個人的には男子学生が増えると活気が出てきていいのではないかと思っているのですが…。看護の現場では男性の体力を必要としているケースもあるようなのですが、今の時代、女性も体力ありますから一概には言えませんね(笑)。
―地元出身の学生さんが多いのですか。
金川 半分以上が兵庫県内あるいは、神戸市内からの学生ですから、卒業後も県内、市内に残る学生が増えてきています。

恵まれた環境、素晴らしいキャンパス、忙しい学生!?

―綺麗な恵まれた環境にある大学ですね。ゆったりと学んでほしいということですか。
金川 この大学の学生のカリキュラムを見ると、とても「ゆったり」という状況ではないようです。単科大学ですので、回りの大学とも交流してほしいと思うのですが、その余裕もあまりないようです。
―オレンジ屋根の建物もとても素晴らしいですね。
金川 開学の際にナイチンゲールの考え方を取り入れているので、建物も彼女の出生地・イタリア・フィレンツェのイメージで造られたと聞いています。
―ナイチンゲールの考え方とは?
金川 命を大事にする、相手の思いに応じた看護を提供するといった考え方です。看護師の本質は、単に医師の助手として湿布をしたり薬を投与するのではなく、患者さんの生命力の消耗を最小限にするための環境を整え、患者さんの生命力を強めていくことだという考え方を確立した人だと、私は思っています。
―看護師に向いているのはどういう人なのでしょうか。
金川 やはり人間が好きということだと思います。また、コミュニケーション能力を持ち、患者さんの思いをきちんと取り込める人でしょうか。
―今後について。
金川 大学の役割は良い人材を養成することです。これからも世の中の役に立つ人材を育てていきたいと思っていますので、皆さんのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
―是非、応援させてください。
本日はありがとうございました。

あたたかみのあるデザインで統一された広々とした美しい学舎


カフェテリアもあり、地域の人々も訪れる交流の場


多くの卒業生が神戸で看護師となり活躍している


神戸市看護大学 学長
金川 克子さん

1939年生まれ。1963年東京大学医学部衛生看護学科卒業、1972年保健学博士(東京大学)を取得。1972年金沢大学医療技術短期大学部看護学科助教授を経て教授、1992年東京大学医学部教授・同大学大学院医学系研究科(地域看護学)教授、2000年石川県立看護大学学長・同大学研究科長を経て2009年より現職。なお2008年より石川県立看護大学参与。

神戸市看護大学オープンキャンパス

平成24年7月28日(土)10時~15時
平成24年7月29日(日)10時~15時
事前の申し込みは不要です。
ご来場は公共交通機関をご利用下さい。

◆入試相談コーナー
◆先輩コーナー
◆体験コーナー など

[問い合わせ先]
TEL.078-794-8080
http://www.kobe-ccn.ac.jp
〒651-2103 神戸市西区学園西町3丁目4番地
神戸市看護大学 事務局総務課

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