2019年
3月号
3月号
世界の民芸猫ざんまい 第十回
「我輩は 黒猫 である」 黒猫奇譚
中右 瑛
吾輩のご主人さまの民芸猫コレクションには由来がある。船乗りをしていた古い友人が東南アジア航路の行き先々で、お土産代わりに買っていた猫の玩具が溜まり溜まって百点余りにのぼったコレクションである。友人が亡くなった後、吾輩のご主人さまが一括して引き取った。東南アジア系の木彫や土偶が多く、古くて貴重な品々である。高額なヨーロッパの陶磁器はいたって少ない。いま補給中である。
黒猫の吾輩がご主人さまに引き取られた由来は、シリーズの巻頭でお話ししたが、ご主人さまがなぜ黒猫に嵌ったかをお話しせねばならない。竹久夢二の名作・黒猫を抱いた女性「黒船屋」に登場する黒猫は、前世紀(19世紀)末のパリで大人気のキャバレー「シャノール」(黒猫)に遡る。詳しくはご主人さまの著書『夢二黒猫奇譚』(豆本)のお話をせねばならないが、残念なことにこの連載は、誌面の都合で今回にて打ち切りとなった。
パリの「シャノール」や夏目漱石、猫好きの小説家・大仏次郎の話は何かの機会でお話し申そう。
今年のゴールデンウィークの期間中、日比谷公園内の図書文化館で「アートになった猫たち展」(4月26日~6月23日)を開催、そこでご主人様は「黒猫奇譚」のお話をする予定だ。good luck!
■中右瑛(なかう・えい)
抽象画家。浮世絵・夢二エッセイスト。1934年生まれ、神戸市在住。行動美術展において奨励賞、新人賞、会友賞、行動美術賞受賞。浮世絵内山賞、半どん現代美術賞、兵庫県文化賞、神戸市文化賞、地域文化功労者文部科学大臣表彰など受賞。現在、行動美術協会会員、国際浮世絵学会常任理事。著書多数。