2013年
6月号

ぶらり私のKOBE散歩 Vol.9

カテゴリ:KOBE散歩, インテリア, グルメ

コスモポリタンな神戸

リリー・マッキンソン(Lilli Makinson)

貿易商としてスイスから神戸に渡り、グルメだったスイス人のお父様と、お料理上手だった日本人のお母様。そんな両親のもとで育ったリリーさんが娘時代から愛した味、現在お気に入りのショップを訪ねました。

神戸の外国人はみんな「フロインドリーブ」のパンとケーキで育った

スイス人の父と、日本人の母は、戦争時代を乗り越えて結ばれた。「パパはアドベンチャーが好きだったから、スイスには合わなかったみたい」という行動派のお父様はアルゼンチン育ち、成人して貿易商となり、名古屋から神戸へ。そこでお母様と出会った。戦争後、スイスに戻った夫を追って、実家から勘当されながらもお母様は数週間かけてスイスに渡ったという。そこで生まれたのがリリーさんだ。
神戸へ来たのは3歳のころ。「小さな頃は大人しい子だったわよ。でも中2のとき海星女子学院からカナディアンスクールに転入して、それで変わったの」とリリーさん。
「私が娘のころは、パンはフロインドリーブしかなかった。外国人はみんなここでパンを買い、お誕生日ケーキも毎年フロインドリーブで作ってもらってた」。質の良いバターとクリーム、ナッツを使い、素朴なドイツ系のお菓子はリリーさんの大好物で、おなじみのクッキー「大ミミ」はお父様も大好きだったという。
現在、カフェのある「フロインドリーブ生田本店」があるのは、もとはユニオン教会の建物。ユニオン教会の牧師さんの娘とリリーさんは同級生で、この教会には毎日来ていたとか。フロインドリーブのオーナー、ヘラ・フロインドリーブ・上原さん姉妹とは海星女子学院(インターナショナルスクール)の同窓生だ。

ナッツの入った「ゲベック」は娘時代からの大好物(スイーツ・ゲベック/346円)


かつてハンター坂にあったフロインドリーブのケーキが大好きで、ショウウィンドウに貼りついていたというリリーさん。「憧れだった」イースターバニー型が左上にある。


子どもの頃日曜日のたびに来たユニオン教会が現在はカフェに


フロインドリーブ 生田本店

TEL.078-231-6051
神戸市中央区生田町4-6-15
SHOP:10:00~19:00
CAFE:10:00~19:00
モーニング10:00~11:30、
ランチ11:30~14:00
※モーニング、ランチは平日のみ
水曜休

和雑貨や丈夫な和家具は海外へのおみやげに人気

リリーさんはじめ、外国人たちが訪れるというアンティークショップは、骨董のお店「奈々重」。和だんすや陶磁器、銀食器、木彫りの家具など買い求めては、スイスに運んでいる。「だからスイスの家は純和風よ」。特に和だんすは、他のどの国の家具にも負けない使いやすさ、頑丈さで重宝しているという。外国人観光客には、和服地や食器のほか、鉄鍋や銀製品などが特に人気だとか。

外国人観光客も多く訪れる骨董品店


古い家具や食器は丈夫で美しい


民芸・骨董 奈々重

TEL.078-222-8565
神戸市中央区山本通2-14-26
営業11:00~19:00 無休

トアロードを下り、お気に入りの婦人帽子店「マキシン」へ

父・ハンスさんは、1974年にスイスシャレーを創業する以前は、神戸外国倶楽部のマネージャーをつとめていた。「外国倶楽部のすぐ下に『相楽園』があって、外国人はみんなここでお花を買ってた。向かいにアンティークショップ『丸木屋』、お肉の『丸十』、美容室『Marga』、銀製品の『サカタ』、アメリカンファーマシー、トアロードには外国人が行きつけのお店が並んでたのよ」という坂道を下る。
お気に入りの婦人帽子のお店「マキシン」に立ち寄った。エレガントな帽子、カラフルでキュートな帽子、どれも似合ってしまうのがさすが。「マキシンの帽子は軽くて心地よくて、ここの帽子をかぶり始めると他がかぶれなくなるのよ…」

工房で手作りされている婦人帽子が並ぶ


夏の帽子を試着してみました


「お花の飾りがなんともすてき」と、リリーさんは感嘆の声


Maxim

TEL.078-331-6711
神戸市中央区北長狭通2-6-13
営業10:00~18:00 水曜休

今年で創業40年伝統的なスイス料理の数々を味わう「スイスシャレー」

オープン当時は70%が外国人客だったという「スイスシャレー」。神戸に住むスイス人に、本場のスイス、ヨーロッパの味わいを届けたいとオープンした。今もその伝統は守られており、特に「バターとクリームとソーセージにはうるさいの」というリリーさん、ソーセージは、静岡の生産者にたのんでスイス独特の長いソーセージを作ってもらい、濃度の高いクリームと質の良いバターを取り寄せる。おなじみのチーズフォンデュは、高級ワインを惜しげもなく使ってしまう。ウィンナーシュニッツェル(仔牛のカツレツウィーン風)、ゲシュネッツェルテス(仔牛のクリーム煮込み)などこだわりの食材を使ったお料理を、まるでリトル・スイスのような店内でいただくと、スイスへミニ旅行した気分に。

(手前)ウインナーシュニッシェル/仔牛のカツレツウィーン風(奥)ゲシュネッツェルテス



男前なイタリア人マネージャーと


飾り棚などのペイントはすべてリリーさんが描いたもの


レストラン スイスシャレー

TEL.078-221-4343
神戸市中央区北野町3-2-4
営業 ランチ11:30~15:00
   ディナー17:00~22:00 月曜休

リリーさんと北野を歩く。
「北野を中心にした半径500メートルの中に、教会がいくつあるか数えてみたの。カトリック教会があって、プロテスタント教会があって、イスラム教のムスリムモスク、ジャイナ教寺院、関帝廟、それから日本の神社、お寺…。たくさんの国の宗教が集まって、それでもみんなが仲良く暮らしてる。世界では戦争が絶えないけれど、これが神戸なのね」と、リリーさん。

北野周辺の教会、たくさんの宗教の教会を集めたマップを作ろうと思ってるの、とリリーさん


フロインドリーブの近くにある創業90年の老舗バー「アカデミーバー」。お父様が通っていたという。


リリー・マッキンソン(Lilli Makinson)

レストラン「スイスシャレー」オーナー
スイス人の父、日本人の母の間に生まれる。レストラン「スイスシャレー」のオーナーのかたわら、日本、スイス、上海を行き来し、ジュエリーデザイナーとしても活躍。ジュエリーとパワーストーンのショップ&工房がスイスシャレーの近くにある。

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