2013年
6月号

急性医療総合センター開設!

カテゴリ:医療関係, 教育・スポーツ

兵庫医科大学病院
病院長 太城 力良さん

兵庫医科大学病院の「急性医療総合センター」が完成し、4月から本格的に動き始めた。急性期医療が効率的に集約された新しいセンターについて、太城病院長にお聞きした。

―急性医療総合センターの特徴をご紹介ください。
太城 兵庫医科大学病院は、阪神・淡路大震災翌年から災害拠点病院として災害時の対応、少なくとも入院患者さんの診療の継続が大きな目標となりました。新センターでは、機械室、発電室、ボイラー室などを屋上に置き、停電時でも最低72時間は対応可能としました。もちろん免震構造で、地下を造らず、1階の階高を上げることによって、津波などの災害で1階が稼働できない場合でも2階以上が稼働できるようにしています。離れた場所にあった救命救急センターと手術室を同じ建物内に置き、更に2階にあるEICU(救命救急集中治療室)とCCU(冠動脈疾患集中治療室)合わせて20床を、場所とスタッフをフレキシブルかつ、効率的に活用できるようにしました。また、手術用ナビゲーターや手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」ほか、大型化されてきた医療機器に対応できる広さ、天井高を取っています。
―スタッフが働きやすい環境にも配慮しているそうですね。
太城 従来は閉鎖された空間で重症患者さんに緊張しながら接するという環境でした。今回は武庫川沿いに全面ガラス張りのラウンジを設け、少なくとも休憩時には外の光と緑を眺めながら寛げるなど、スタッフのアメニティにも配慮しました。別棟にはカフェやコンビニがあり、新センター内にはアイスクリーム自販機も設置しています。女性の看護師がたくさんいますからね(笑)。
―順調に動き始めていますか。
太城 救命救急センターでの三次救急受け入れ可能数は明らかに増えています。EICUとCCUの共通使用が功を奏していると思います。ただし、3階のICUも含め、看護師が不足しており全床利用できていないのが現状です。
―今後の見通しは。
太城 少しずつですが看護師は増えてきています。また、兵庫医科大学の兄弟校である兵庫医療大学での人材育成という戦略的対策も取っていますので、徐々に解決できると考えています。今年も60人ほどの卒業生が当病院を希望して来てくれました。新センターのフル稼働には、もう少し人員が必要な状況です。
―救命救急センターの主な受け入れ地域は。
太城 芦屋、西宮、尼崎という阪神南圏域ですが、人口比で最も多いのは西宮、続いて芦屋です。その他、尼崎、神戸市東灘区、宝塚、伊丹、川西などから来られます。眼科救急に関しては、夜間の眼科手術に対応できる医療施設が近隣にはほとんどなく、県内だけでなく大阪府内からも来られ、苦慮しています。
―全国的にみても眼科のレベルは高いのですね。
太城 斜視の手術件数を始め、眼瞼・涙器・眼窩の疾患、視神経の疾患、眼球運動障害等の治療では全国1位の実績です。※(表参照:「MDC6別 兵庫医大病院症例数一覧」)
―アイセンターとは。
太城 斜視・硝子体手術等の眼科手術の件数は年々増加しています。そこで、ほかの手術とは分離させて新センターにアイセンターを設け、眼科病棟とつなぎ、眼科の看護師が担当するシステムをつくりました。
―周産期センターの役割は?
太城 低出生体重児などのためのセンターですが、妊婦さんの産科病棟とつながっていますので授乳などの際にはお母さんが廊下を渡って来ることができます。
―大学病院と地域とはどのような関わりを持っていますか。
太城 厚生労働省では医療機関の役割分担を進めています。当院は研究・開発・教育の義務を果たす特定機能病院として、急性期医療を担う責任があり、紹介状を持ってきた患者さんに限定するという方針をとっています。そこで、「かかりつけ医を持ちましょう」と呼びかけています。日頃みていただく近隣の診療所の先生と大学病院の医師が連絡を取りながら治療しましょうというものです。その結果、外来患者さんの数は幾分減少しつつあります。また、急性期を過ぎたら近隣の医療機関に戻っていただくようにしていますので、平均入院日数も減少しています。
―同じく西宮にある関西学院大学とは提携をしているそうですね。
太城 本学は単科大学ですから教養科目の先生が多くはいませんので関西学院大学の授業を提供いただいています。閉ざされた学内でずっと過ごすより、1年生の毎週一日だけでも総合大学で学生生活を送るのは良いことですからね。関西学院大学からも興味を持った学生さんが来て、現場を見てもらっています。
―チーム医療はいかがですか。
太城 現在、4名の専門看護師と21人の認定看護師がチーム医療の中心になって進めてくれています。
―日頃現場をご覧になって、現代社会ではどういった疾患が増えていると思われますか。
太城 急増しているのは、潰瘍性大腸炎です。難病指定されていますが、それが外されるのではないかというほど増えてきていますね。当院のIBD(炎症性腸疾患)センターへは全国の患者さんの約1割が来ておられます。また全体の傾向としては、高齢化社会に伴い複数の疾患を持つ高齢疾患が増えていますね。
―最後に、兵庫医科大学病院の今後についてお聞かせください。
太城 急性医療総合センターの完成は次なるステップへの第一歩です。続いて、精神科病棟を移設し、その跡地に学生教育部門と基礎系講座が入る新しい「新教育研究棟」を造る予定です。昨年度から基本設計に入り、平成26年度着工に向け計画を進めています。今後9号館と立体駐車場を解体し、病院施設を移設する予定です。順次、建物を南側に寄せて、北側は緑地帯にしようという壮大な長期計画が「西宮キャンパスグランドデザイン」です。
―まだまだ発展しそうですね。
太城 そうですね。これからです。


最新鋭の手術機器を備えたアイセンター


手術センターにある内視鏡手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』


産前産後の一貫した療養を提供する周産期センター


高度で先進的な医療の提供を目指す


チーム医療の充実を図り、より患者の立場に立った医療サービスを目指す



太城 力良(たしろ ちから)

兵庫医科大学病院長
学校法人 兵庫医科大学理事

1972年大阪大学医学部卒業。アメリカ留学、大阪大学助教授、大阪府立母子医療センター手術部長を経て、1994年より兵庫医科大学麻酔科教授に就任。同病院中央手術部長、臨床工学室長、集中治療部部長、医療安全管理部部長などを兼務。2004年副院長、2009年4月から現職。

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