7月号
近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ|Chapter 2 プレイリースタイル|平尾工務店
平尾工務店がお届けする「オーガニックハウス」の基本的な理念や意匠を編み出した世界的建築家、フランク・ロイド・ライトについて、キーワードごとに綴っていきます。
ライトの初期の作品は主に住宅でしたが、これらの建物はプレイリースタイルとよばれています。その特徴は、屋根の高さが低く、軒や庇が張り出し、水平のラインが強調され、まるで地面にしっかりと根付いているようなところです。
それまでのアメリカの住宅は、箱を組み合わせた構造が外観に現れがちなスティック様式、塔のような装飾があるシングル様式などが人気でした。このようなヨーロッパの伝統を受け継いでいる住宅から脱し、大平原に建つアメリカの風土に合った新たな住宅の提案として、ライトはプレイリースタイルを考案したようです。
そこには、ある意味ライトのそれまでの人生が凝縮していると言えます。彼は11歳でウィスコンシンの農場に送られ、まさにプレイリーの中で自然の本質に触れながら過ごしました。その経験から、風景との調和を思い描きつつ、大地と一体化するように水平のラインが視覚的に強調されています。この「ストリームライン」はその後、1930年代になると機関車や自動車など工業デザインでも流行していきました。
面白いことに、ライトの師であるルイス・サリヴァンは高層建築を得意とし、垂直方向のラインが印象的な建物を多く手がけています。その直線の視覚的効果を90度回転させて、プレイリースタイルに採り入れたとも解釈できそうです。
水平方向への展開は建物内部にも生かされ、不必要な壁をなくし、箱を並べ重ねたような間取りから脱却して、スペースの連続性を生み出しています。
プレイリースタイルの代表作はロビー邸やダーウィン・D・マーティン邸などですが、これらと同様の「建物はその土地に従う」という思想に基づく伸びやかなデザインや広がりのある空間の住まいは、平尾工務店がお届けするオーガニックハウスで現在も「正統に」実現可能です。
FRANK LLOYD WRIGHT
フランク・ロイド・ライト
1867年にアメリカで生まれたフランク・ロイド・ライトは、91歳で亡くなるまでの約70年間、精力的に数々の建築を手がけてきました。日本における彼の作品としては、帝国ホテルやヨドコウ迎賓館、自由学園明日館が有名です。彼が設計した住宅のすばらしさは、建築後100年経っても人が住み続けていることからわかります。
これは、彼が生涯をかけて唱え続けてきた「有機的建築」が、長年を経ても色褪せないことの証明でしょう。フランク・ロイド・ライトが提唱する「有機的建築」は、無機質になりがちな現代において、より人間的な豊かさを提供してくれる建築思想なのです。