3月号
縁の下の力持ち 第20回 神戸大学医学部附属病院 栄養管理部
栄養摂取は治療の一環。美味しく食べて早期回復を!
栄養を十分にとって一日でも早く元気になってほしい、体に良い物を美味しく食べて健康でいてほしい。
そんな思いで〝縁の下の力持ち〟を自負し、日々、頑張っているのが栄養管理部です。
―栄養管理部のメンバーは。
山本 医師は専任で、高橋路子先生(糖尿病・内分泌内科)と松田佳子先生(食道胃腸外科)、管理栄養士は私を含め13名、調理師5名等約20名の職員と、約80名の給食委託会社職員が所属しています。
―低栄養とは。
高橋 本来必要な栄養が足りていない状態を言います。一人暮らしの高齢者で食事量が極端に少ない、たくさんの薬を飲んでいて食欲がないなど、低栄養の方は意外と多いんですよ。低栄養で手術をしてしまうと創傷治癒に時間がかかり、感染のリスクも高まります。術後や化学療法によって食欲がなくなっている入院患者さんもしっかり栄養をとれば順調に回復し、入院期間を短縮できますから栄養管理も治療の一環と捉え、綿密な栄養管理計画を立てています。
―入院患者さんの食事はどのように作っているのですか。
山本 常時約600名以上おられる患者さんに、厚労省が策定する「日本人の食事摂取基準」をベースにした院内食事治療基準から作成した献立に、新調理システムを導入し、徹底した温度管理で安全でできたての美味しい治療食の提供に努めています。大学病院には合併症を持った患者さんも多く、栄養成分別コントロール食を中心に組み合わせ一人一人の状態に応じて調整しています。
―栄養管理計画は。
高橋 入院患者さんほぼ全員が特別な栄養管理が必要ですからそれぞれに計画書を作成します。食事摂取量、身長・体重、血液検査などの数値を基に栄養評価をした結果を管理栄養士が確認し、低栄養が認められる患者さんには病棟栄養カンファレンスを実施し、さらに改善が必要と認められた場合には「NEST」が介入します。
―NESTとは。
高橋 神戸大学病院では通常の栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)に電解質異常と内分泌代謝疾患(Electrolyte and Endocrine)も合わせてサポートする、栄養・輸液サポートチーム「NEST」として活動しています。栄養摂取は経口からだけではなく、経管で胃や腸に直接栄養を入れる経腸栄養、点滴による静脈栄養などさまざまな方法があります。医師、歯科医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、歯科衛生士が専門知識を持ち寄り最善の方法を導き出します。
―対象になる患者さんは。
高橋 病棟栄養カンファレンスで介入が必要と判断された場合や、主治医から直接依頼がある場合、さらに大きな手術の前後、化学療法を受けている患者さんも対象になります。また腎臓・肝臓・骨髄移植を受ける患者さんは全例、ICU・HCUに入室中の急性期重症患者さんも対象としています。
―外来患者さんへの栄養指導もされているのですか。
山本 個別の栄養指導以外に、生活習慣病の患者さんを対象に5回シリーズの集団栄養指導を行っています。日頃の食生活をうかがった上で、食事療法への動機づけのため病気と食事について、医師と管理栄養士等が説明します。患者さんごとに必要量をお伝えし、食事会で実際の食事をご自身で確認していただきます。その後、同じような食事療法が必要な患者さん同士で悩みや問題を共有し解決策を話し合えるよう支援します。食事療法を続けるのはなかなか容易ではありません。患者さん同士の繋がりも重要になってきます。
高橋 患者さんの指導には医師と一対一だけではなく、管理栄養士や看護師、時には心理療法士も加わってチームで関わることがとても大切です。最近糖尿病学会で方針が打ち出されたところですが、栄養指導は人それぞれ代謝や運動量などが違いますから、よりきめ細かく個別対応するという考え方に変わってきています。
―ますます大変なお仕事になりますね。
高橋 美味しく食べて健康に!という一心です。栄養バランスの取れた体に良い食べ物・食べ方を神戸大学発で提供して地域の皆様の健康に貢献していきたいと思っています。
神戸大学医学部附属病院
栄養管理部部長
栄養・輸液サポートチーム Chairman
糖尿病・内分泌内科
高橋 路子さん
神戸大学医学部附属病院
栄養管理部副部長
管理栄養士
山本 育子さん