1月号
兵庫に網代あり
網代忠勝さん 32歳
兵庫県警察機動隊・剣道六段
平成24年11月3日、第60回全日本剣道選手権大会。剣道日本一を決めるこの大会で、兵庫県勢として45年ぶりにベスト4に進出、「兵庫に網代あり」を全国にアピールした。どっしりとした安定感のある構えから繰り出される技は、早くて重い。無駄打ちがなく、一撃にかける打突は、すべてが捨て身である。また、面、小手、胴、突きのどの技でも一本を取る器用さも兼ね備える。
現在の剣道界では、警察剣道が席巻する。兵庫県警機動隊に所属する網代選手の練習時間は、1日6時間にもおよぶ。警察官にとって犯罪者の確保は絶対であり、そのために剣道、柔道、逮捕術の日々の鍛錬に余念がない。精神力・体力を極限まで鍛え上げることで、警察官としての使命感が備わっていくのだ。
剣道には特別訓練員(特練)が設けられ、いわば剣道界のエリートが20名ほど集められ、互いに鎬を削ることで、更なるレベルの向上をめざす。メンバーの中には学生時代に日本一に輝いた者も在籍する。しかし毎年、学生時代に活躍したエリート剣士が奉職する度に、成績を残せなかった者は容赦なく特練からはずされる。厳しい世界でもある。
特練10年目を迎える網代選手は、現在、特練の主将を務め、団体戦では最後の砦・大将を務める。昨年の全国警察剣道大会(団体戦)では、大将決戦や代表戦をへて兵庫県警の上位入賞に貢献した。全国警察選手権大会(個人戦)では3位入賞を果たし、安定した戦いぶりに、世界大会を戦う日本代表の最終選考メンバーにも残った。「日本代表の合宿を通じて感じるのは、一流の選手は剣道から生活にいたるまで妥協がないこと。そういう姿を、主将となった自分が先頭に立って、県警の後輩に示したい」。物静かな口調の中に意志の強さを感じる。
今年の目標を尋ねると、「やはり全国警察剣道大会の優勝が念願の目標です」。現在の剣道界では、警視庁と大阪府警が双璧を成し、それに神奈川県警や兵庫県警などが続くが、勝敗は僅差になることが少なくない。「自分の弱点は慎重になり過ぎて、相手を見てしまう瞬間に打たれるところ。日頃の稽古でそこを克服したい」。来たるべき大舞台に備えて、黙々と稽古に励む。
網代忠勝(あみしろ ただかつ)
1980年生まれ。育英高校から法政大学へ。高校時代にはインターハイ個人3位、大学時代には関東学生選手権大会3位。2003年兵庫県警に奉職。全国警察官大会(団体戦)一部3位。全国警察選手権大会(個人戦)3位。国体2位。