6月号
輝く女性Ⅱ 連載記念対談 伊藤 紀美子さん
お洒落・ファッション, 神戸, 西宮
女性が輝く街・KOBEから、上質の文化を発信したい。
インタビュアー・三好 万記子
好評連載中の「輝く女性シリーズ」。3年目スタートを記念した今月号では、現インタビュアー・三好万記子さんのたっての希望で、初代インタビュアー・伊藤紀美子さんとのスペシャル対談が実現しました。
ともに専業主婦から華麗に転身し、今は仕事の世界の魅力にどっぷりはまっておられるお二人。
共通の思いも多く、トークがはずみます。
“会社”という3人目の子供
伊藤 「輝く女性」の連載1年間、お疲れさまでした。
三好先生とは、次女の嫁ぎ先と三好先生の義理のご両親のご縁で、「お嫁さんが、料理教室を頑張っておられる」というお話は伺っていたんです。
三好 伊藤さんのお嬢さんは、教室を始めてまだ2、3年目の頃からの初期の生徒さんです。そのお母さまが実は広くご活躍されておられる伊藤さんだ、とはいろんな方から伺っていて。でもなかなかお会いできなかったんですよね。
伊藤 ある日、三好先生の自宅のパーティーにお声がけいただいて。さすがに素敵なテーブルセッティングとお料理で感激しました。共通の知人も多くて、それから何度かお会いしてますよね。年代も全然違うんですけど、これだけエネルギッシュで、やはり人柄が魅力的なので、皆さんに慕われておられるんだと思います。
三好 私こそ、今日は働く女性の先輩として、どうやって子育てと仕事を両立してこられたのかを是非伺いたいです。
伊藤 残念ながら、私が若い頃は女性の生き方として仕事を持ちながら子育てするという選択肢はあまりなくて…。女学院を卒業後、社会経験なく結婚したので、実際働き始めたのも下の娘が高校に入ってからでした。父の死後、会社を引き継いだ形です。振り返ってみれば、川の流れのように自然に今に至っているという感じですね。
ですから、働きながら子育てしておられる皆さんに偉そうなことは言えないんです。
三好 でも、伊藤さんが専業主婦から始められたなんて、勇気づけられるお話です。私も結婚後、仕事を辞めて家庭に入っていました。主人の仕事の関係で渡仏し、料理の勉強を始めたのが20年前。帰国後に教室を始めたのも、実は軽ーい気持ちで(笑)。それがあれよと大きくなって、会社にしたのが5年前です。正直、「しまった!」と思うところもあって。2人の息子に続いて、“会社”という3人目の子供を産んじゃった!という感じです(笑)。もちろん、産んだからには可愛いし、育てるしかなくて、大変です。
伊藤 ある意味、私は子育ての時期に子育てに集中できたのは幸せだったかもしれません。
頑張れば新しい世界が広がる
三好 現在はご自身の会社のみならず、女性初の商工会議所副会頭になられるなど、多方面でお忙しくご活躍ですね。
伊藤 それはもう大役ですから、かなりの覚悟でお引き受けしました。でも、よかったと思うのはそれなりに頑張れば新しい世界が広がるということ。それは仕事を始める時も同じで、何か新しいことを始めたらまた新たな出会いがある。大変だからと逃げると、自分の中に後悔が残る気がします。何事も前向きに取り組みたいんです。
それに私、元来、なまけものでね(笑)。だから、できるだけ自分に負荷をかけた方がしゃんとできるんですよ。それでついいろんな役をお引き受けしてしまうのです。
三好 私も同じところがあるので、お話を聞いてほっとしました。自分の中のできる範囲に空きがあるのにお断りするのは怠けている気がして。
伊藤 それでも、なにか人のお役に立てて、ご縁が増えていくのも幸せなことですね。専業主婦だと限られた人間関係だけれど、仕事をすると、何より人との出会いが楽しくて、やめられないですよね。
三好 私も半分、仕事が趣味です(笑)。大変な部分もあるけど本当に楽しいので、もっと、女性の皆さんができる範囲で社会に出るチャンスがあればいいなと思います。
でも、家庭で仕事への理解を得るのは難しさもあって…。私の場合も、主人にしたら、「子どもが帰るとき家に居るなら自由にしたら」という感じだったのが、実際に仕事を始めると、夜に外出せざるを得ないこともあり、「約束が違うんじゃない?」ということもありましたね。
一つのステップとなったのは、ヒューマンアカデミーさんのカフェの講師を依頼されて、お給料が企業から振り込まれるとなったことです。社会から認められているんだとちょっと驚かれ、見直してもらえたかなという感じです。有難いことに、その頃には生徒さんも増えて。
伊藤 三好先生の教室には、若いママたちから幅広い年齢層の生徒さんがいらっしゃるけれど、同じ価値観、同じ感性の方たちが集まるサロンのような雰囲気がありますよね。もはや、“阪神間の文化”とも言える存在ではないかしら。
三好 自慢できる素敵な生徒さんがたくさんおられます。実は、身だしなみに気を使われるきれいな方ほど、きちんと料理される。時間配分も上手く、バランスよく生きておられる方が多いと感じます。音楽やアートに携わられている方も多いです。
「美と健康」をテーマにした街を
三好 伊藤さんも、神戸文化マザーポートクラブの活動など、文化振興にも取り組んでおられますね。
伊藤 もともと4年に一度行われていた神戸国際フルートコンクールの成功を機に、神戸の企業・経済人が文化振興を支援しようと集まった会です。それも道満さん(オリバーソース社長)から頼まれ、名前だけの代表のはずが、どっぷりはまってしまって(笑)。
神戸って実は、民間での文化の支援が遅れているんですよ。税金は福祉に配分されがちですから、文化は本来経済界が支えるべきだと思います。だから企業さんにご協力をお願いしに、足を運んでいます。
三好 ヨーロッパでは国を挙げてサロンを支援しますね。神戸でもそのように文化を創る活動をされているのが、素晴らしいです。私も微力ながら、若い芸術家の方と知り合うと、できるだけ上の方につなげるよう意識しています。
伊藤 そうね、音楽家の方に会うと全員応援したくなります。
三好 コンクール後に開催されたガラパーティーも素敵でした。衣装や音楽、お食事などすべてが、「大人たちが創る成熟したパーティー」で、神戸の上質な文化を感じました。日本では、「若い方がいい」という傾向がありますが、年を重ねるのって素敵だなと教えていただけた気がします。こうやって、理想とする女性像を体現してくださる先輩方が近くにたくさんいることが、神戸の魅力です。
伊藤 よく神戸のインバウンドは…という話にもなるのですが、神戸は量より質で勝負。ヨーロッパの街のようにきちっと存在感があればいいんです。そのためには、神戸のブランディングがもう少し必要かなとは思います。
三好 神戸の暮らしやすさや、住んでいる人の上質感が現れる形があればいいですよね。
伊藤 神戸に来たら元気になって帰ってもらえるような「美と健康」をテーマにした街なんかいいと思うの。例えば、北野坂を歩くと、ヴィーガンの店や無農薬野菜のレストラン、減塩料理のおいしい店があるとなると、また神戸に足を運んでくださるでしょ。
三好 皆さん、舌はこえていくのに、「太りたくない」「体にいいものを」という思いをお持ちですから、神戸でそれが実現できたら素敵ですね。
伊藤 紀美子(いとう きみこ) 田嶋株式会社 代表取締役社長
神戸生まれ。95年より同社社長に就任。02~06年神商議女性会会長、07年から国際ビジネス委員長。16年、女性初で神戸商工会議所の副会頭に就任。
田嶋株式会社/1899年、繊維を主体とした貿易商社としてスタート。会社創業110周年の2009年に美容&健康分野を新設。オリジナルブランドのスキンケア「PLUSUI(プラスイ)」を開発販売。同ブランドでナチュラルミネラルウオーターも販売
三好 万記子(みよし まきこ) 株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母