1月号
ニュートラルからの発想
FREEDOM株式会社
代表取締役社長 鐘撞 正也さん
「ニュートラルからの発想」をもとに、資金計画から土地探し、設計・施工、アフターケアまで、建築家として家づくりをトータルにサポートするフリーダムアーキテクツ。全国に数百件の実績を持ち独立設計事務所としてはNO1。設立から18年、ブレることなく持ち続けてきた思いを、代表取締役社長の鐘撞さんにお話しいただいた。
震災をきっかけに起業
1995年、24歳で個人事務所を設立しました。きっかけは阪神・淡路大震災です。
その2年前から建設会社に勤務し、設計も担当していました。震災ではたくさんの家屋が倒壊しました。工務店の跡を継いだ同級生たちから「鐘撞ならいいプランを作ってくれるだろう」と設計の依頼がくるようになり、勤めながら片手間にできることでもなく、思い切って独立しました。私が決して神戸から離れようとは思わないのは、そういった経緯があったのも理由の一つです。
物事はニュートラルから考えよう
設計・デザインはもちろん、ビジネスのやり方も物事全て白紙に戻った状態〝ニュートラル〟から考えようとしています。車でいえば、どの方向へも動ける状態です。
私が独立した当時、建築設計事務所は一般にはまだまだ敷居が高く〝先生業〟と呼ばれているような状況でした。私はそこに疑問を抱いていました。誰でも皆、家を建てるなら夢や希望を持っています。「いいデザインにしたい」という思いはあるはず。ところが設計事務所はそれぞれ融通のきかない個性でしか対応してくれません。
私は学生の頃から、建築に限らずデザインすることが好きでした。でもここで、自分がやりたいデザインは二の次にして、お客様の考えを聞き、切り口を見出して発展させていこうと考えました。
完全オーダーでゼロから造る家
建築設計事務所に依頼すると確かにカッコイイけれど、価格は高くなりがちです。それでは一般の人には遠い存在になってしまいます。住宅ローンを抱えて一生に一度の大きな買い物をするのですから、まずデザイン優先ということはないと思います。コストが大事、長く住み続けるために機能性も大事。その次に、やはりカッコ良くなければ…。それに応えて、ありきたりの材料で住宅を商品化してしまったのではハウスメーカーになってしまいます。私たちは、完全オーダーでゼロから造り上げ、なおかつ適正価格で満足いただける家づくりの仕組みを作ってきました。
その仕組みは…
現在、全国で約70人の設計者が各々年間4~5軒の家づくりを最初から最後まで担当しています。通常、ハウスメーカーでは営業担当がお客様とお話して、設計、施工の担当へと引き継ぎます。このように分業化してしまうと、どうしても一軒、一軒の家への思いが入らないんですね。そこで私たちは、設計者がお客様のお話をきちんとお聞きし、思いを理解した上で、自分の頭で考え自分で図面を描き提案します。
また、フリーダムアーキテクツでは各エリアで15社程度の登録工務店を置いています。設計からお引き渡しまできちんと責任を持とうというものです。更にアフターケアも各事務所に専属チームを置き、定期的にお客様と連絡を取り、不具合が発生した場合には工務店に連絡するシステムを取っています。
フリーダムアーキテクツだからできること
核家族化が進むなか、家の中でも家族がバラバラという時代。家族の動きや顔がリビングから見えるようにリビング内に階段を造って欲しいという要望が多いですね。また、物騒な世の中ですから外から見たら安全安心、でも中庭などを造って家の中は明るく開放的にしたいという要望も多いです。吹き抜けが好まれた時代もありましたが高熱費を考えると現実的ではありません。でも天井は高くて開放的なほうがいい。そこでリビングの天井は高くして、2階フロアに階段を付けるスキップフロアという方法をとるケースも多いです。そのほかにも、時代の流れを思わせる傾向はいくつもあります。
しかし基本的にお客様の要望は様々。例えばシニアの方が皆さんバリアフリーを望まれるかといえば、運動のために敢えて段差を付け、後々足腰が弱ってきたら改造したいという方もおられます。対面キッチンは主流ですが、大の料理好きや、匂いや汚れが気になる人などは、独立したキッチンを望まれます。フリーダムアーキテクツでは、得意技のゼロから造り上げることを活用して、お客様それぞれに違う要望を十分に生かす家づくりを目指しています。
いいもの、カッコイイものを適正価格で
現在、神戸をはじめ、大阪、東京2カ所、名古屋2カ所、千葉、横浜に事務所を置き、近々、京都と福岡に開設予定です。独立設計事務所としては、恐らく受注件数日本一だと思います。基本的に私たちのビジネスモデルはネット集客と雑誌媒体の力で全国に向けて発信し、レスポンスを受けます。なのでこのような事は、自然な流れだと思っています。エリア拡大は簡単ですが、難しいのが人材です。設計者として優秀でも、自分の世界に籠っているようではフリーダムアーキテクツでは通用しません。自分の思いだけではなく、お客様の思いをくみ取りながら家づくりができる、そういう人材育成には時間がかかります。少しずつ育ってきていますので、それに応じたペースで広げています。ただし、全てお客様の要望通りに家を造るだけでは、私たちの存在の意味が分からなくなります。「いいもの、カッコイイものを適正価格で造る」というフリーダムアーキテクツの根本部分を理解しつつです。そこに必要なのがコミュニケーション力です。
「20年足らずでここまで成長してきたのは何故?」と聞かれることがあります。「いいもの、カッコイイものを適正価格で造るという基本姿勢をブレることなく持ち続けてきたから」と自信を持って答えます。もちろん、今後もブレることはありません。ご期待下さい。
鐘撞 正也(かねつく まさや)
FREEDOM株式会社
代表取締役社長
1971年生まれ。兵庫県出身。”注文住宅受注件数が独立系設計事務所では全国NO1のフリーダムアーキテクツ代表取締役。著書に『身の丈コストでデザイン住宅を建てる。』(幻冬舎)『世界でたったひとつの間取りができるまで。』(幻冬舎)がある。
現在は全国に9つの建築設計事務所を運営。(2013年現在)
FREEDOM株式会社
神戸スタジオ
神戸市中央区山本通 2-4-24
リランズゲート 4F
TEL.078-265-0556 FAX.078-265-0557
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