1月号
里親ケースワーカーの〝ちょっといい お話〟
「子どもにチャンスを与えるのは大人の責任」
2012年に愛の手運動が50周年を迎えたことを記念し、ニューヨークにある非営利団体で活動しておられた、里親・養子縁組ソーシャルワーカーの尾崎京子さんを神戸に招き、11月に3日間の講演会を開催しました。尾崎さんが活動していたのは、親と暮らせない子どもたちの中でも特に、難病や障がいを持ち、治療や介護が必要な子どもたちに里親や養親を求める団体「New Alternatives For Children」(通称NAC)。この名前は、「新しい選択肢を子どもたちに」という意味です。
尾崎さんは、NACのクライアントの中からタマラという女の子の例を話されました。10人兄弟の末っ子であるタマラは生まれつき骨が折れやすく、家族によるケアが難しかったので病院で過ごしていましたが、NACの援助によって適切な教育を受け、家族もセラピーなどに参加するようになり、生みの親とも暮らせるようになりました。アートセラピーによってアーティストとしての才能を開花させたタマラは、芸術を通して子どもたちを助けたいと、大学で心理学を専攻、ニューヨーク大学のアートセラピーの修士号を修得し、現在は障がいのある子どものセラピストとして働いています。
この例でもわかるように、子どもにチャンスを与えるのは、私たち大人の責任です。タマラが病院の中でずっと過ごしていたら、選択肢は少なく、こんなチャンスはなかったかもしれない。子どもの能力や才能を花開かせるには、チャンスが必要です。チャンスに恵まれない子どもたちが地域に出て、地域で暮らせるようにサポートするのがNACの役割の一つです。
「日本と比べて里親制度が根強いアメリカですが、やはり子ども一人を育てるのは大変なことです。里親制度は、親子分離のトラウマを受けた子どもに温かい家庭環境を提供し、大人と深い絆を結びながら、健やかに育つことのできる環境を与えることができます」と、尾崎さんは話され、参加者はいろいろな刺激やヒントを与えられました。
お話/橋本 明さん
〈家庭養護促進協会事務局長〉
社団法人 家庭養護促進協会
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