2025
06.25

WEB版・スペシャルインタビュー|
歌手 夏川りみさん

カテゴリ:Web限定

 昨年、歌手としてメジャーデビュー25周年を迎え、今年5月に26年目に入った。現在、心を新たに全国ツアーの真っ最中だ。タイトルは『〝たびぐくる〟2025』。沖縄の方言で〝旅心〟。「全国を旅しながら、歌で沖縄の心を伝えたい…。そんな思いから生まれたタイトルなんですよ」と夏川りみは語る。 

デビュー25周年は通過点…
好きな歌をいつまでも歌い続けたい

■歌は国境を越えて

 世界規模のワールドワイドなツアーがスタートした。
 7月5日は神戸市の神戸新聞松方ホールで、26日は大阪市の森ノ宮ピロティホールでコンサートを開く。「関西の人たちに沖縄の心を伝える」ことを今から楽しみにしている。
 この関西ツアーの前には中国公演を開催。6月6日に成都、8日には上海。7月13日は、また、中国へ行き、杭州で歌う予定だ。
 「2018年から中国でコンサートを行っていますが、中国の人たちはみんな、沖縄の歌をとても気に入ってくれるんです」
 歌に国境はないと実感してきた。世界は不変だとも。
 2001年、夏川が歌った『涙そうそう』は大ヒットし、オリコン週間ンシングルランキングで157週連続でベスト100入りというロングラン・ヒットの快挙を果たした。
 「中国や台湾や韓国などアジアのほか、ブラジルやペルーなど南米でも『涙そうそう』は、とても人気があるんですよ」
 誰もが口ずさむ、この名曲は、どうやってヒットしたのか? その秘話を教えてくれた。
 デビュー後。同じ石垣島出身、3人組の人気バンド『BEGIN』の地元でのコンサートの様子がテレビで放映されていた。
 「このとき、初めて聞いた曲でしたが、感動し、私もこんな歌を歌いたい」と衝撃を受けたという。
 1998年末に『涙そうそう』は作られた。作詞はシンガー・ソングライターの森山良子。作曲は『BEGIN』。 
 夏川は、東京・渋谷で開かれた『BEGIN』のコンサートを聴きに行き、そのまま楽屋を訪ね、直談判した。

■名曲誕生秘話

 レコーディングの日。
 「私はこの歌を歌うことができるうれしさのあまり、力いっぱい歌いました」
 すると、BEGINのボーカル、比嘉栄昇から「歌詞の意味を理解して歌っている?」と聞かれた。
 「(森山)良子さんが、早世した自分の〝にいにい(兄)〟のことを思って作詞したんだよ。そう教えてくれました」
 夏川は録音を中断し、詞を何度も読み返し、歌詞の意味を理解したうえで、再度、レコーディングに挑んだ。
 「みんなに伝わるよ」。BEGINのメンバーは、今度は誉めてくれた。
 「私の姉とBEGINの3人は中学時代の同級生なんですよ」
 つまり3人は、夏川にとって歌手としての先輩、そして故郷の〝にいにい〟でもあるのだ。
 夏川が心を込めて歌い上げる『涙そうそう』は、まず、故郷で徐々に人気を広げていく。
 沖縄での人気が浸透し始めたころの、こんな秘話も教えてくれた。
 那覇空港のロビーで、移動のために旅客機を待っていたときだった。
 「台風のために欠航が続き、空港で何時間も待たされていた人たちが皆、疲れ果て、子どもたちはむずかり出して…」
 夏川は同行していたバンドのメンバーと話し合い、「今ここで歌おうか?歌で少しでも心を休め、和んでもらえるのなら」と考え、急遽、空港のロビーでコンサートを始めたのだ。

■終わらない旅 

 空港のロビーに『涙そうそう』を歌う夏川の声が響き渡った。
 「あのとき那覇空港で『涙そうそう』を聞きました」。そんな声を今でも聞く。歌の力を再認識する瞬間でもある。
 全国ツアーの他、今年は各地のショッピングセンターを訪れ、歌を披露している。
 タイトルは、その名も『全国モールライブツアー』。
 父の指導で歌い始めたのは、「物心ついたころから」と言う。
 メジャーデビュー26年目の感想を聞くと、「今も大好きな歌を歌い続けられていることが幸せ」と打ち明けた。その初心の思いを届けたくて始めたのが、モールで歌うことだった。
 「もっと、気軽に私の歌を聴いてもらう場を作ることができれば。歌で心を癒してほしいから」。そんな夏川の思いを実現させた〝普段着〟のコンサートなのだという。
 さらに、今、構想中の話も教えてくれた。
 「沖縄の八重山に伝わる古典民謡があるんです。独特の方言の歌詞に独特の歌い方…。沖縄出身の私にとっても、訓練して覚えなければ歌うことのできない難しい歌です。何年かかるか分かりませんが、この歌を習得し、いつかアルバムとして発表できれば」
 26年目も、まだ、旅の途中。
 夏川りみの〝たびぐくる〟のゴールは、まだまだ先にある。
文・戸津井康之

公演情報

夏川りみコンサートツアー
〝たびぐくる〟2025

神戸公演
日時:2025年7月5日(土) 15:30開演
会場:神戸新聞 松方ホール

大阪公演
日時:2025年7月26日(土) 15:30開演

夏川りみオフィシャルサイト
https://www.rimirimi.jp/

月刊 神戸っ子は当サイト内またはAmazonでお求めいただけます。

  • DISCOVER BMW. ようこそ、BMWの走りへ|Kobe BMW
  • フランク・ロイド・ライトの建築思想を現代の住まいに|ORGANIC HOUSE
〈2025年6月号〉
永田良介商店|オーダーメイド家具[KOBECCO Selection]
KOBECCOお店訪問|Restaurant Rokumei saryu (レス…
⊘ 物語が始まる ⊘THE STORY BEGINS – vol.55 落語家桂…
城田優が思う、LOVE &PEACE VOL.3
HYOGO産を世界に発信する プロジェクト2025|【特集】ひょうご国|扉
オープニングセレモニー|開会式 鏡開き|【特集】ひょうご国
展示に参加した21産地|【特集】ひょうご国
コラボレーション作品の展示|【特集】ひょうご国
ワークショップ|【特集】ひょうご国
実演・セミナー|【特集】ひょうご国
振る舞い酒・洋菓子等の配布|【特集】ひょうご国
神戸御影メゾンデコール|オートクチュールインテリア[KOBECCO Select…
ガゼボ|インテリアショップ[KOBECCO Selection]
il Quadrifoglio(クアドリフォリオ)|ビスポークシューズ[KOBE…
御菓子司 常盤堂|和菓子[KOBECCO Selection]
L’AVENUE|パティスリー[KOBECCO Selection]…
ボックサン|神戸洋藝菓子[KOBECCO Selection]
アレックス|トータルビューティーサロン[KOBECCO Selection]
フラウコウベ|ジュエリー&アクセサリー[KOBECCO Selecti…
STUDIO KIICHI|革小物[KOBECCO Selection]
亀井堂総本店|瓦せんべい[KOBECCO Selection]
㊎柴田音吉洋服店|ハンドメイドビスポークテーラー[KOBECCO Selecti…
トアロードデリカテッセン|デリカ[KOBECCO Selection]
ゴンチャロフ製菓|洋菓子[KOBECCO Selection]
マキシン|帽子専門店[KOBECCO Selection]
マイスター大学堂|メガネ[KOBECCO Selection]
神戸靴|SPIGOLA(スピーゴラ)
美しきかな ひょうごの文化財 | 工芸品として鑑賞に値する鎧兜 | 第六回 太山…
神戸で始まって 神戸で終る 60
大阪アジアン映画祭特別企画 ② スペシャル・インタビュー
神戸ウォーターフロント「TOTTEI PARK 緑の丘」 4月25日(金)竣工
WHISKY HARBOUR KOBE ウイスキーハーバー 神戸
ビフテキのカワムラで〝本物〟の神戸ビーフを心ゆくまで
連載 教えて 多田先生! 素粒子物理学者の宇宙物理学教室|〜第24回〜
【特集】大阪・関西万博で食べる楽しみはハズセナイ!|-扉(目次)-
海外パビリオングルメ|【特集】大阪・関西万博で食べる楽しみはハズセナイ!
こんな未来系グルメも見つけた! |【特集】大阪・関西万博で食べる楽しみはハズセナ…
万博ならではの贅沢な感動体験|【特集】大阪・関西万博で食べる楽しみはハズセナイ!…
神戸偉人伝外伝 ~知られざる偉業~ (62)後編 小磯良平
近代建築の巨匠、フランク・ロイド・ライトを学ぶ|Chapter 13 遠藤 新…
港まち神戸に、 愛と感謝を込めて~ 「Color the Summer! 彩りあ…
企画から販売、食育まで。夢を繋げるプロジェクトストーリー第4回 ドリーム豚饅プロ…
ひょうご神戸まちかど学だより|歴史と文化を学び続けて半世紀|明石で活動する玉藻会…
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」第165回
神大病院の魅力はココだ!Vol.43 神戸大学医学部附属病院 呼吸器外科 田根 …
出会いと学びの旅から Vol.18
神戸のカクシボタン 第138回 地元にまつわる妖怪・UMA・生物の謎を探る!!『…
連載エッセイ/喫茶店の書斎から 109 三島由紀夫の記憶力
今月の映画
有馬温泉歴史人物帖 ~其の弐拾七~ 田中 芳男(たなか よしお) 1838~19…
ベトナム元気X躍動するアジア 第18回|ディエンビエンフーを訪問―ベトナム企業の…
出待ちしてもいいですか?|第6回|海風と人の優しさに触れる街