4月号

兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第163回
伊丹市医師会市民健康フォーラム
「齢をとるのはこわくない」について
─伊丹市医師会市民健康フォーラムは例年、健康に関する話題を採り上げていますね。
生島 はい。フォーラムは平成14年度から開催していますが、生活習慣病や感染症、介護、健康診断など、医療や健康に関する身近な話題をテーマに採り上げています。
─令和6年度はどんなテーマでしたか。
生島 昨年度の第22回は10月26日に伊丹アイフォニックホールで開催され、「齢をとるのはこわくない」をテーマに、主に高齢者の健康維持について5名の講師がさまざまな角度から講演してくださいました。令和6年度に私が内科医会の会長を拝命し、初めての大仕事でしたので不安もありましたが、280名ほどの市民のみなさまにご来場いただき、御協力いただいた皆様には大変感謝しております。
─最初の講演はどんな内容でしたか。
生島 伊丹市介護保険課の保健師、屋葺百合香さんが「やってみよう☆伊丹いきいき百歳体操」を演題に、伊丹市が推進している介護予防体操のほか、健康寿命をのばす活動についてわかりやすくお話ししてくださいました。病気や怪我をきっかけに筋力が低下し、要介護状態になることが増えますが、それを防ぐには日常的な運動が重要です。この「いきいき百歳体操」は0~2㎏の重りを手首や足首に巻いて負荷を調整しながら、椅子に座って手足をゆっくり動かす筋力運動で、約30分間の体操を継続する事で座る、立つ、階段昇降、物を持ち上げるといった生活動作に役立ちます。伊丹市では112の団体がこの体操を実施しており、参加者からは「歩くのが早くなった」「ふらつきが減った」「膝の痛みがなくなった」などの声が寄せられていると紹介されました。

第22回伊丹市医師会市民健康フォーラムは「齢をとるのはこわくない」をテーマに、昨年10月に開催。主に高齢者の健康維持について取り上げた
─2番目の講師はどなたでしたか。
生島 私が「高血圧と塩分制限」についてお話いたしました。血圧が高い人ほど脳卒中や心疾患による死亡リスクが増し、特に収縮期血圧180以上の人は120未満の人と比べ40-64歳で約10倍、65-74歳で約4倍、75歳以上で約2倍のリスクを抱えています。収縮期血圧をわずか2㎜Hg下げるだけで脳卒中による死亡を1万人、循環器疾患の死亡を2万人減らせるとされています。ですから血圧に気を配っていただきたいのですが、高血圧の予防・治療には生活習慣の改善が重要です。

最初に、伊丹市介護保険課の保健師・屋葺百合香さんが、健康寿命をのばす活動について講演
─高血圧には減塩とよく言われていますよね。
生島 その通りです。減塩のコツとして、新鮮な食材の使用、香辛料や果物の酸味の活用、具だくさんの味噌汁、低塩調味料の利用、外食・加工食品の制限、漬物の控えめな摂取、麺類の汁を残すことなどが挙げられ、適量を意識しながらバランスの取れた食生活を送ることが重要です。また、適正体重の維持、運動習慣の確立、節酒、禁煙も有効なんですよ。

本稿の生島雅士先生は「高血圧と塩分制限」について講演。高血圧の予防・治療には生活習慣の改善が重要となる
─3番目の講演はどのようなテーマでしたか。
生島 おしっこで目が覚めると寝不足になるなど生活の質を低下させますが、このことで悩んでいる方も多いと思います。そこで、伊丹よしおかクリニック院長の吉岡厳先生にお願いし、「夜間頻尿の方に伝えたい」をテーマにお話ししていただきました。夜間頻尿とは夜間に1回以上排尿のために起きる状態のことで、60歳を超えると夜3回以上起きる人が増加するそうです。その主な原因は膀胱機能の問題、夜間多尿、睡眠障害に分けられます。膀胱機能の問題として男性は前立腺肥大、女性は過活動膀胱が多く適切な薬物治療が有効です。夜間多尿については飲水量やアルコール摂取、高血圧、糖尿病、下半身への水分貯留などが関係します。睡眠障害については睡眠時無呼吸症候群が疑われることもあるので、かかりつけ医を受診し原因を特定して適切な治療を受けましょうと呼びかけておられました。

3番目の講演で「夜間頻尿の方に伝えたい」をテーマに講演した、伊丹よしおかクリニック院長の吉岡厳先生
─その次の講演はどのような内容でしたか。
生島 演題は「認知症の予防と早期診断」で、講師は市立伊丹病院老年内科部長の伊東範尚先生でした。認知症の早期診断にはかかりつけ医への相談が第一歩なのですが、認知症が疑われる際の専門医や認知症疾患医療センターとの連携について紹介されていました。認知症の予防策については、質の良い睡眠、生活習慣病の管理、禁煙・適度な運動のほか、社会との関わりを持つことも認知機能の低下防止に効果的だというお話でした。

続いて「認知症の予防と早期診断」の演題で講師を務めた、市立伊丹病院老年内科部長の伊東範尚先生
─認知症のお薬が使われるようになったと報道で見ましたが。
生島 認知症の進行を抑える新たな薬も登場していますが、認知症を「なくす」くすりではなく、あくまで早期診断が重要です。他の対策をおこなって初めて有効となるので、まずはかかりつけ医に相談し、認知症予防と適切な対応を受けた上で健康的な生活を維持しましょうとのことです。
─5番目の講演はどのようなテーマでしたか。
生島 最後は口腔衛生がテーマで、近畿中央病院歯科口腔外科部長の石井庄一郎先生が「健康生活は健口(けんこう)から」をテーマに講演されました。健康寿命を延ばすには、「おいしく食べる」「楽しく会話する」ことが重要であり、そのためには口腔の健康が不可欠と力説されていました。また、歯周病は動脈硬化や認知症などと関連することや、健康な歯の数や義歯使用と認知症発症や転倒との関連も報告され、観衆のみなさまも興味深く耳を傾けていました。さらに適切な口腔ケアが衛生と誤嚥性肺炎の発症率を低下させること、骨粗しょう症と口腔健康は密接に関係していることも紹介され、われわれ医師も歯科治療と医療との連携の重要性を再認識しました。

最後の公演は「健康生活は健口(けんこう)から」がテーマ。
近畿中央病院歯科口腔外科部長の石井庄一郎先生が、口腔衛生について講演した
─次回のフォーラムはいつ開催の予定ですか。
生島 10月18日(土)に伊丹アイフォニックホールで開催予定です。現在準備を進めていますが、テーマなど詳細が決まり次第伊丹市医師会のホームページなどでお知らせしますので、みなさまぜひご来場ください。
伊丹市医師会ホームページ