9月号
世界屈指の名門校ノースロンドン・カレジエイト・スクールが2025年に神戸校を開校
世界トップクラスのインターナショナルスクール、ノースロンドン・カレジエイト・スクール(North London Collegiate School=NLCS)が、六甲山サイレンスリゾートを運営する八光グループの八光エルアールとタッグを組み神戸校を開校する。まずは来年、2025年に六甲アイランドのアジア・ワン・センター内に小中学校を設置し、2028年には六甲山上に新校舎を設立して中高一貫の英国式ボーディングスクール(寄宿制)が誕生する予定だ。
NLCS本校は1850年の創設。イギリスの中でも最も歴史ある女子校の1つに数えられる。特筆すべきはその実績で、イングランド・ウェールズ・北アイルランドで運用されている学位認定制度のGCSE、イギリスと英連邦諸国の一般教育修了上級レベル学業修了認定のA-Level、スイスの非営利団体である国際バカロレアのディプロマ(業績証明)といった世界基準の各試験において、それぞれイギリス第1位。生徒の18%がオックスフォード、ケンブリッジ、アメリカのアイビーリーグに進学し、卒業生の40%以上が世界トップ20の大学で学ぶというから、〝超〟のつくスーパー進学校と評価できる。
しかし、決して〝勉強だけ〟できる頭でっかちを育成する機関ではない。学びの枠にはめるのではなく、生徒一人ひとりの個性や興味を尊重して知的好奇心とモチベーションを育む教育を実践し、スポーツや音楽、演劇などの課外授業も充実。学力のみならず感性も涵養してくれそうだ。
そんなNLCSは世界に展開している。これまでに韓国の済州島(2011)、アラブ首長国連邦のドバイ(2017)、シンガポール(2020)で開校しており、神戸校は4番目の海外分校ということになる。カリキュラムはブリティッシュスタイルに固執せず、それぞれの国の実情や文化に沿うものとなっていて、神戸校では禅や茶道、礼儀作法などを学ぶカリキュラムも採用予定とのこと。
なお、六甲山に完成予定の新校舎は、旧六甲山ホテルの改修を手がけるなど、六甲山サイレンスリゾートのマスタープランを統括するミケーレ・デ・ルッキ氏が監修予定。日本からは磯崎新や倉俣史朗らも参加したポストモダンのデザイン集団「メンフィス」の中心的メンバーとしても活躍したイタリアを代表する建築家・プロダクトデザイナーの一人だが、その卓越したセンスでどのような学び舎をデザインするのか、こちらも楽しみだ。
去る7月16日に神戸商工会議所で開催された記者発表会では、八光エルアール代表取締役の池田浩八氏が今回の事業の概要を説明しつつ、自身が海外のビジネスの場で名門校のコミュニティが織りなす世界的ネットワークの重要性を実感したことがNLCSとのパートナーシップを決意したひとつのきっかけとなったと語った。また、NLCSの教育戦略ディレクターであるグエン・バイロン氏が学校の歴史や教育の特色などについて説明。久元喜造神戸市長も駆け付け、六甲山の活性化にも繋がるのではと展望を述べた。在大阪イギリス総領事のキャロリン・デビッドソン氏もあいさつし、英国出身のA・Hグルームが六甲山に日本初のゴルフ場を開設したことを紹介しつつ、神戸校開校で日英両国の絆がより深まることを期待しているとコメント。その後のトークセッションでは、池田氏と東京大学教授・慶應義塾大学特任教授で文部科学副大臣の経験もある鈴木寛氏が語り合った。神戸出身の鈴木氏はNLCS神戸開校について「感無量」と胸を熱くしつつ、「これが新しい神戸の開港になるだろう」と語ると、池田氏は「もっと身近に新しい教育の選択肢を」と応えた。
為替相場や社会情勢が不透明なこのご時世、海外留学はリスクも少なくなく、円安傾向が続けば生活費なども含め費用面の負担は大きい。それと比べるとNLCS神戸校は比較的にリーズナブルに、世界基準の教育を受けられるのではないだろうか。また、灘校や神戸高校など名門校が群雄割拠する神戸・阪神間に世界トップクラスの教育機関ができることで、地域の教育のさらなる発展も期待されるところだ。そして、六甲山の森から世界で活躍する人材が羽ばたけば、神戸の新たな誇りとなるだろう。