4月号
ベトナム元気X躍動するアジア 第4回|ベトナム人と共生する―「角上楼」と「井筒楼」
少子高齢化の日本経済において労働力不足は深刻な課題です。外国人雇用やインバウンド観光は経済成長のために不可欠。二〇二三年6月末時点の日本在留外国人は三二二万人。国籍・地域別に見れば、中国が79万人、ベトナムが52万人、韓国が41万人と続きます。その中で技能実習(36万人)はベトナム人が過半数(19万人)です(出入国在留管理庁)。一定数の在留外国人が観光外国人を誘引すると考えれば、中国に次いでベトナムが注目です。そこで今回は、愛知県の渥美半島・田原市の由緒ある日本旅館「角上楼」と「井筒楼」で働くベトナム人・グエン=ミン=タンさんを紹介します。
文・ 上田義朗
渥美半島初の登録有形文化財に指定された角上楼と井筒楼
タンさんが働く愛知県田原市の「和味の宿 角上楼」と姉妹館「浪漫の宿 井筒楼」(以下、角上楼)は、渥美半島で初めての登録有形文化財に指定された歴史ある日本旅館です。館内や客室は五つ星クラスの施設やアメニティが整備され、同館でお会いした大手旅行サイト担当者は「東海地区でナンバーワン」の宿泊施設と評価。
詳しくは、角上楼公式サイトhttps://www.kakujoro.com/でご覧ください。
渥美半島・伊良湖岬の魅力
何でもある観光地の課題
角上楼の公共交通アクセスは、新幹線の名古屋駅と豊橋駅を経由して少し不便。しかし年間の観光資源は盛りだくさん。イチゴ・メロン・ブルーベリー狩り、ブランド和牛・キャベツ・ブロッコリー・大あさり・本ミル貝・ニシガイなど産地地消が楽しめます。トレッキング・潮干狩り・海水浴・釣り・サーフィン教室・伊良湖温泉もある。
これらは「何でもあるが、全体として特徴がない」状況です。さらなる田原市の発展のためには、それを打破する戦略や施策が求められます。そこで外国人富裕層のインバウンド観光が「起爆剤」と考えられます。
外国人富裕層のインバウンド旅行
中国の次にベトナム
ベトナム人観光誘致の役割が、角上楼で営業管理を担当するタンさんに任されます。関西で「ふぐ料理」は福岡・博多を連想しますが、角上楼では渥美半島の天然とらふぐに着目。その歯ごたえは格別でした。
タンさんは東京のホテル観光専門学校を卒業し、角上楼に勤務して九年目。四人家族で二人の男の子は保育所、ベトナム人の奥様はパート勤務。日本で充実した生活です。
関西空港から角上楼に向けた
新ルート開発
外国人の初めての日本の観光地は東京・大阪・京都・富士山が定番。そこで新たな観光メニューとして、関西空港から伊勢神宮を見学して、鳥羽港からフェリーで海上移動する渥美半島・角上楼で一泊するまでに、。これは外国人観光客にとって新鮮です。
私見では、外国人富裕層を満足させるためには宿泊施設は角上楼、そして観光バスは、日本人向けに多数の運行実績のある「真結(ゆい)」(神姫バス株式会社)とみなされます。角上楼・タンさん・真結の連携が、田原市の観光発展の「突破力」になることが期待されます。
■上田義朗(うえだ よしあき)
流通科学大学教授 日本ベトナム経済交流センター副理事長
外国人材雇用適性化推進協会(ASEO)代表理事
合同会社TET代表社員・CEO