9月号
Movie and CARS|キャデラック・ドゥビル
映画:『グリーンブック』2018年 アメリカ
登場車両:キャデラック・ドゥビル
CADILLAC DE VILLE
文・株式会社マースト 代表取締役社長 湊 善行
時は1962年、黒人ピアニストのシャーリー(マハーシャラ・アリ)は人種差別が強いアメリカ南部へのコンサートツアーを計画する。専属ドライバーには多くの応募の中からニューヨークの高級クラブで用心棒として働くイタリア系白人のトニー(ヴィゴ・モーテンセン)を経験と物怖じしない性格からスカウトする。新車のキャデラック2台(1台はシャーリーとトニー、もう一台はチェロとベースの奏者)でツアーが始まる。裕福で教養のあるシャーリーとイタリア移民でダウンタウン育ちのトニー、ツアーの序盤では二人の会話は噛み合わない。シャーリーは行く先々のコンサートで歓迎され、演奏も喝采を浴びるのだが、ホテルやレストランは黒人専用を利用しなければならず、黒人がトラブルなく旅行できるガイドブック「グリーンブック」が頼りのツアーが続く。邸宅のホールで演奏前にシャーリーがトイレを尋ねると、庭の端のあまりにも質素な黒人専用トイレを指差され、抵抗を感じたシャーリーは宿泊するホテルまでトイレに戻る。正装に着替える控室は厨房の僅かなスペースでとても控室とは呼べない。それでもシャーリーは文句を言わずに白人たちに素晴らしい演奏を披露する。人種を超えて芸術を伝導することがツアーの目的でもある。シャーリーのピアノを舞台裏で聴くトニーはその類まれな才能に感銘を受けているが、各地で起こるシャーリーへの差別に憤りを隠せない。シャーリーが深夜、バーに出掛け白人に襲われる場面でトニーが助け出し。ボロボロのアップライトピアノが用意されたホールでは、トニーが凄んでスタインウェイに変更させた。トニーが奥さんに宛てた手紙の校正はシャーリーがしてくれる。イタリア移民と馬鹿にした警官を殴ったトニーを留置場から出してくれたのはシャーリーだ。数々の出来事から互いに信頼し合う二人。アラバマ州で最後の夜は黒人専用のクラブに出掛け、シャーリーはバンドに加わりアドリブ演奏を披露、素敵なライブを楽しんだ。長いツアーは終わり、クリスマスイブに間に合うようにニューヨークを目指す。急いで帰ればトニー家のパーティーに間に合うが、大雪の中の運転と睡魔には勝てずに一休みするトニー。シャーリーはパーティーに間に合うように自らキャデラックのハンドルを握るのだった。そして雪降るイブの夜、ニューヨークに戻った二人、リアシートで目覚めたトニーはパーティーに間に合ったことを喜ぶ。シャーリーはパーティーの誘いを断ったが、再びワインを手にしてトニーの家にやってくる。トニーの奥さんはシャーリーに手紙をありがとうとささやく。二人はツアー後も友情を育んだ。この物語は実話でありピアニスト:ドン・シャーリーの1960年前後の演奏が聴ける。映画の後にドン・シャーリー「Georgia On My Mind」を聴きながら夜のエピローグ。