3月号
「舞台一筋30年・・・コメディーもシリアスもこなす オールラウンダーに」佐藤 太一郎<吉本新喜劇>
「この舞台で私には一体何が求められているのか? 舞台を完成させるために必要な役割は? 稽古ではそればかり考えています」。吉本新喜劇の〝ニューリーダー〟に抜擢された実力派、佐藤太一郎さんは演技論について真摯に語る。
お笑いの舞台では、刑事や悪役など強面のキャラクターが印象的だが、「わろてんか」「まんぷく」「おちょやん」などNHK連続テレビ小説の常連で映画などでも幅広く活躍。自ら脚本を手掛ける舞台にも力を入れる。
〝助っ人〟として舞台へ呼ばれることも少なくない。3月4~5日、兵庫県尼崎市のあましんアルカイックホール・オクトで上演される舞台「尼崎ストロベリー」に出演するために、2月中旬の夜、大阪市の稽古場で汗を流していた。
「吉本新喜劇の舞台は平日は2公演、土日は3~4公演の日もあり、週に20ステージ立つことも。実は今日も午後の公演を終わって稽古へ駆け付けました」。多忙の疲れを見せず、若い俳優とともに柔軟体操を繰り返す。
舞台の原作は落語作家、成海隼人さんの実体験を基に書かれた同名小説だ。
高校生の駿一(真丸)は、お笑い好きの母、貴代子(篠原真衣)と二人暮らし。ある日、母ががんで余命宣告を受ける。駿一は笑うことでがん細胞を攻撃するNKキラー細胞が活性化する説を信じ、「笑いの力でオカンを救う」と漫才コンテストへの出場を決意する…。
佐藤さんは貴代子に恋心を抱くコロッケ屋の大将を演じる。重要な役どころだ。
脚本、演出を手掛けるのは舞台「はい!丸尾不動産です。」シリーズなどを手掛ける関西テレビの木村淳さん。「丸尾~」でもタッグを組む盟友の佐藤さんに木村さんが出演を依頼したのだ。
一昨年の「丸尾~」の公演後、木村さんはこう伝えた。
「自分にはライフワークがある。大都会でなく中核都市で演劇の文化を根付かせたい。10年、20年と続くような…。今、尼崎で計画中の舞台がある。その第一歩を一緒に歩んでくれないだろうか?」と。
「もちろん、即答で承諾しましたよ」
今回の舞台では、もう一つ、木村さんから託された役割がある。
「今回は若い俳優が多い。芝居に懸ける姿勢を背中で示し、伝えてほしい」と頼まれた。
「ドラマの演技が長距離走なら、お笑いは瞬発力が必要な短距離走。どちらも続けてきた私は中距離走のスペシャリストを目指しているんです」。つまりどんな役柄もこなすオールラウンダーだ。
中学生から本格的に芝居に取り組み、舞台のキャリアは30年を越えた。
「必要とされるなら、どんな役でも演じ切りますよ」。稽古場で見せる背中は熱かった。
文・戸津井康之
公演情報『尼崎ストロベリー』
◆日時:2023年 3月4日(土) 15:00、5日(日) 12:00/16:00
◆会場:あましんアルカイックホール・オクト ◆料金:4,500円(税込、全席指定)
◆原作:成海隼人(小説「尼崎ストロベリー」幻冬舎) ◆脚本・演出:木村淳
◆出演:真丸、篠原真衣、堀くるみ、春名真依、井本涼太、堀川絵美、佐藤太一郎ほか
◆お問合せ:尼崎市総合文化センタープレイガイド 06-6487-0810(9:00~19:00)
◆舞台「尼崎ストロベリー」公式HP
https://amast.jp/