2月号
harmony(はーもにぃ) Vol.60 がん共存療法の試み
緩和ケア医である山崎章郎氏の「ステージ4の緩和ケア医が実践するがんを悪化させない試み」(新潮選書)を読みました。山崎氏の著作である「病院で死ぬということ」はベストセラーになり、映画化されました。私も読んで感動したのを覚えています。
山崎氏は30年来ホスピスケアに取組み、これまでに2500人の人たちを見送りましたが、2018年夏に大腸がんが見つかり、肺に転移していることからステージ4と宣告されます。この段階での標準治療は抗がん剤による治療なのですが、治癒のための治療ではなく、数ヶ月から数年の延命のための治療であることを山崎氏は熟知しているため、苦しい抗がん剤の治療はやめて、ガンを治すのではなく、がんと共存するための方法を模索していきます。いろんな医師が書いた書籍を読み、その中から、納得のいく代替療法を取り入れ、自ら実験台となって効果を確認していく作業の経過が細かく書かれています。緩和ケアの専門医であるだけに、自分の身体の症状の変化は手に取るように理解することができ、定期健診の結果ごとに一喜一憂して揺れ動く心の動きも率直に書かれています。
この本を読んでいて、私の父が膵臓ガンで亡くなったときのことを思い出していました。
父は内科の医者でしたが、30年余り前ですので、父にはガンであることを告げずに担当医から別の病名を伝えてもらいました。父は医者として多くの患者を看取った経験から自分の病状や死期を悟っていたようでした。とうとう息を引き取るまで父にはガンであることを告げず、偽りの病名を告げていたことが今でも心残りです。
山崎氏の本を読んで、父もガンと告げられていたら、残された時間を自分なりに締めくくる覚悟を持てたのではないかと思ったりもしています。
山崎氏は今「がん共存療法研究所」準備室を立ち上げ、残された時間を抗がん剤だけに頼らないで、ステージ4の生き方にチャレンジする試みを続けています。
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