2023年
2月号
2月号
竹中大工道具館 叡智の彼方へ|第五回| 木を組む秘訣
和小屋実物大構造模型
今でもほとんどの住宅は木造ですが、多くの部屋は壁や天井で囲まれて、柱や梁などの構造材が見えないようになっています。また近年はプレカットと呼ばれる機械加工された部材が住宅にも多く用いられるようになりました。
しかし、かつての住宅は全て手作りで、その骨組みを作ることこそが大工の最も重要な仕事でした。それを御覧頂けるのが本稿で紹介する小屋組み模型です。これは一般的な瓦葺きの建物の屋根の骨組みを現寸大で再現したものです。
住宅はなによりも丈夫でなければなりません。地震や台風などの脅威に耐えるだけの構造的な強さが求められます。そのために、大工は部材の接合部分を精緻に、かつ木材の強度を損ねないように組み立てることを心がけました。組み方にも様々な種類があり、場所に応じてそれらを使い分けています。高い加工精度で作られた一つ一つの接合部が、建物全体の強さになっているのです。
また接合部分の多くは、栓で固定されていても、その栓を抜けば取り外せるようになっています。つまり木造建築は解体できるように作られているのです。かつては解体した建物を移築したり再利用したりするのは当たり前でした。環境負荷の低減にも貢献していたと言えるでしょう。
そして大工は接合部分にさりげなく遊び心をしのばせることもありました。上の写真の「四方鎌」と呼ばれる継ぎ方もその一つで、一見すると外せないように見えます。どうすれば外せるのか、是非当館で大工さんとの知恵比べにチャレンジしてみて下さい。
(学芸員・安田徹也)
竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM
神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
開館時間:9:30~16:30(入館は16:00まで)
https://www.dougukan.jp/