1月号
0歳から100歳までみんな生き生き暮らせる街に!
「長田の商店街におしゃれで美味しいチョコレート専門店がある」と聞き、訪ねました。
そこで出会ったのは、生き生きと働く障がいのある人たち、そして元気な会社「PLAST」。
合言葉は“人生、ワクワク”。
7年前に起業したという理学療法士で代表取締役の廣田恭佑さんにお話を伺いました。
株式会社PLAST
代表取締役 廣田 恭佑さん
PLAST起業のきっかけは。
回復期リハビリテーション病院で仕事をしていたころ、「元気に歩いて退院される患者さんがまた戻って来られるケースがとても多いのは何故だろう?」と考え、地元に帰ったらリハビリや運動をする所がないからだと分かりました。また、患者さんは膝や股関節の手術後のリハビリに入院されるケースが多く、「そうなる前に予防できるのではないか」と考えました。そこで、「自分でやるしかない」と勤めていた病院を退職し、自分自身のキャリアアップも目指し27歳で起業しました。
思い切った決断ですね。
痛みに苦しみ、日常生活に困難を来たしている人をフォローしたいという強い思いだけで、経営のことなど何も知らないのに、今思えば無謀ですね(笑)。経営塾に通い、商工会議所で一から教えていただき勉強しました。
当初、運営は大変だったのでしょうね。
ハビリ特化型デイサービス「プラスト長田」開設当初は大変でしたが、半年ほどして軌道に乗り始め、自宅や施設でリハビリを受けてもらえる訪問介護ステーションを開設し、「予防」を目的としたリハビリ施設「リハビリモンスター」を長田と芦屋市に開設しました。福祉用具専門店「フィジオデザイン」、隣で誰でも気軽に利用できるカフェ「フィジオデザインベース」(※)も開きました。
そして、高齢者や障害のある人を対象に現在は全8施設を運営しているのですね。
保育園「ジャングル・ラボ」、それに併設して重度心身障がいがある0歳から18歳の子どもさんが健常な子どもさんと一緒に時間を過ごせるデイサービス「ヒミツキチ」、長田区役所内の屋内公園「おやこふらっとひろば ながた」、一昨年10月に障害者の就労を支援する「QUON CHOCOLATE KOBE」をオープンしました。「クリエイティブロケット」では紙媒体制作やイベント企画などの事業を手掛け、ネガティブなイメージになりがちな医療・福祉をデザインの力でポジティブに変えようとしています。
ネーミングが意外なものばかりですね。
例えば、自分が高齢になった時のことを想像すると、「いかにも…」と思える所には通いたくないな、「デイサービス」はイヤな高齢者でも「モンスター」になら通ってもらえるかな、などと思って…。
長田を選んだ理由は。
入院時と同じようなリハビリを地元で受けてもらえる施設から始めたので、勤務していた病院の近くを選びました。多くの外国人が暮らす長田は多文化共生の街。福祉関連企業も多く、私たちも寛容に受け入れていただきました。
どんどん分野が広がっていますね。
施設利用者さんの声を聞くうちに、「街の困りごとを解決しよう」へと視点が移っていき、それが最終的に目指す「予防」へとつながり、みんな元気に暮せると気付きました。因みに、商店街の理事もやっています(笑)。
「QUON」オープンの経緯は。
障がいのある人にも社会の中で役割が必要です。「誰かのために」という動機があればモチベーションが上がると思うんです。でも普通の就労支援だと賃金が安すぎて、「頑張りましょう!」と言えない。どんな方法がいいのかを模索していたとき、何かの記事で「QUON」のことを読み、「ハンディキャップがあっても高単価のチョコレートを作れる」と知りました。講演会で夏目浩次代表のお話を聞き、不要な添加物を一切使わないというコンセプトにも共感し、「やってみよう」と決断しました。
オープンキッチンで様子が外から見えますが、主にどんな作業をされているのですか。
作業療法士が常駐していますので、一人一人の障がいの特性にどの作業が合うのかを見極めて、3人1組のグループで「テリーヌ」という種類の商品を作っています。製造からパッキング、ギフトづくりまで全ての工程を担当しています。「福祉」は隅に置き隠しておくというイメージを払拭したいと、あえてオープンキッチンにしました。見てもらって、スタッフもピリっと張り切って仕事をしています。
PLASTはこれからもずっと長田で?
長田ではこれからも医療や福祉の専門家が集まり、健康になる要素を取り入れて「街支え」事業を展開していきます。もう一つ「予防」事業を全国展開して、行った先々で長田でのエッセンスを広げていこうと思っています。
※2021年12月2日時点、新型コロナ ウイルス感染症予防のため休店中
株式会社プラスト
神戸市長田区腕塚町4−2−1
TEL.078-786-3074
https://plast-project.jp/
廣田 恭佑(ひろた きょうすけ)
理学療法士にて回復期リハビリテーション病院で勤務後、2015年に株式会社PLASTを設立し代表取締役に就任。リハビリ特化型デイサービス、保育園、訪問看護ステーション、福祉用具、チョコレート店、カフェ、おやこふらっとひろばデザイン事務所など社会に必要な“マチ支え”をテーマに9拠点を運営している。その他、神戸学院女子駅伝競走部、大正筋商店街の理事としても活動している。