1月号
新型コロナウイルスに対する感染防護|~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
神戸大学医学部附属病院 感染制御部長 宮良 高維
【神大病院の新型コロナウイルスへの対応開始】
神戸大学医学部附属病院の感染対策は、国内で1例目が診断されたとの公表(2020年1月16日)後から、パンデミック(世界流行)に伴う流通停滞に備えてマスクやガウンなどの防護具の発注を開始し、24日(春節前日)に初版のコロナ疑い例対応マニュアルを作成して院内の関係部署に配布を始めました。
【県内のクラスター発生施設への支援】
同年3月に入りますと県内でも病院や高齢者施設内で新型コロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生し始め、管轄保健所からの依頼によりクラスター発生施設の感染対策支援に向かいました。この1年半に13の施設に17回訪問しています。そこで感じましたことは、「クラスター発生防止のためには、全ての医療機関と高齢者施設の全職員に新型コロナウイルスに対する感染防護手順や注意事項を周知していただく必要がある」ということでした。内容は、『手袋やガウンなどの安全な着脱手順の習熟と着脱場所の限定、マスク無しでの会話の禁止、ナースステーション内に患者さんを入れないこと、入所者の食事時間をずらす等により食堂に集まる人数を分散して密を避け、共用空間の換気を励行する等』です。既に、施設の代表者が参加する感染対策研修会も複数回開催され、私も協力しておりましたが、現場の皆様全員に周知いただくために県の高齢対策課やいのち対策室の方々と相談して、どの施設でも共通して実施することを勧める感染対策のポスターを6種類作成し、webからダウンロードして施設内に掲示できる様にいたしました。
【今年の期待】
本稿執筆時点では、感染力がデルタ株よりも強いオミクロン株による流行再拡大の可能性が世界中で取りざたされています。今後も新たな変異株が出現する可能性はありますが、このパンデミックが始まってからの2年間にわれわれ人類の方も感染防護について多くのことを学びました。さらに、短期間で開発された効果の高いワクチンも広く普及しています。特に65歳以上の方へのワクチン接種が進んだ第5波では、施設内クラスターの発生が大きく減少し、60代以上の感染者数も第4波の約1/4まで減少しました。また、重症例も少なくなり、わが国はこのワクチンの大きな恩恵を受けたと言えます。今年は、皆様の普段の習慣となりつつある感染対策とワクチンの追加接種により、感染する方は更に減少するものと考えられますし、新しく開発された内服の治療薬も2~3種類が認可される見込みです。こういった理由で、今年の見通しはとても明るいものと期待しております。
https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/detail.page?IMNEWS1=2647783
- 【特集】2022年 新型コロナウイルスをどう考えるか ~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
- ● 眞庭 謙昌(病院長)
- ● 溝渕 知司(副病院長)
- ● 黒田 良祐(副病院長)
- ● 宮良 高維(感染制御部長)
- ● 大路 剛(感染症内科 准教授)
- ● 森 康子(臨床ウイルス学分野 教授)
- (順不同・敬称略)