1月号
コロナ病床について|~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
神戸大学医学部附属病院 副病院長 溝渕 知司
神戸大学医学部附属病院は元々が第一種・第二種感染症指定医療機関でないため、新型コロナウイルス感染症が拡がり始めた当初は、コロナ関連の診療は基本的に神戸市立医療センター中央市民病院などの感染症指定医療機関が行うこととして、当院はコロナ対応をされている感染症指定医療機関で診療が行えない救急患者対応や非コロナ患者の大手術を行うということを地域医療の役割分担としておりました。ただし、患者が増えるにつれ院内ではコロナ緊急対策会議をほぼ毎週開催し、約50床の一つの病棟単位を重症以外のコロナ患者用病棟として転用し、感染症内科や総合内科の先生方を中心に軽症から中等症のコロナ患者の入院診療を始めました。新型コロナウイルス感染対策本部会議はこれまで既に90回以上開催されています。さらに、特に第3波以降、コロナ重症患者や集中治療管理が必要な合併症を持った疑い患者の診療は、重症患者を収容し集中的に治療を行う集中治療部(Intensive Care Unit; ICU)に収容し、人工呼吸管理やECMO管理を含め治療を行っています。これまで約100名の重症患者さんの治療を行っています。当院のICU/HCU(High Care Unit)は計32床ですが、これまでの個室をコロナ重症病床として利用可能な陰圧室に改装して、第5波には最大10名まで同時に重症患者を受け入れる体制としました。
コロナの診療には感染対策が必要です。われわれ医療関係者の個々の感染対策に加え、コロナ患者用病床ユニットとしてゾーニングと呼ばれる病室周辺の区域管理を行うことが必須になります。現在、第6波に備え、当院では最大受入数として、軽症から中等症患者12名および重症患者12名を受け入れることになっています。すべて受け入れると想定すると、一般病床約50床はもちろんのこと、ICU/HCU病床は最大18床を閉鎖しないといけなくなります。これらの病床を減ずるということは、コロナ以外の患者さんの入院や通常の予定手術ができない可能性が生じてくることになります。これまでも第5波までの感染が拡大した期間には、術後にICUに入室する予定がある大手術などを延期せざるを得ない時期がありました。地域の高度医療を支える病院として、これまでの経験を生かして、コロナ患者の診療も行いつつ通常の医療が安心して提供できる病床管理を行うことが大きな責務と強く感じています。
- 【特集】2022年 新型コロナウイルスをどう考えるか ~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
- ● 眞庭 謙昌(病院長)
- ● 溝渕 知司(副病院長)
- ● 黒田 良祐(副病院長)
- ● 宮良 高維(感染制御部長)
- ● 大路 剛(感染症内科 准教授)
- ● 森 康子(臨床ウイルス学分野 教授)
- (順不同・敬称略)