1月号
地域医療における「最後の砦」として|特集~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
神戸大学医学部附属病院 病院長 眞庭 謙昌
神戸大学医学部附属病院は特定機能病院として、がん患者の手術など高度な設備や技術を要する治療や救命診療を行う、地域医療における「最後の砦」ともいえる役割を果たしています。そして、新型コロナウイルス感染者が診断され始めた一昨年3月の時点では、当院は地域における高度先端医療を提供する病院として命の危機にひんした多くの患者さんを救うため、感染症指定医療機関との役割分担を想定していました。実際、近隣の病院においてコロナ対応のため通常機能が低下するなかで、救急患者や早急な手術を要する患者の転院にも積極的に取り組んできました。しかし、コロナ患者受け入れ病院での院内感染発生など、そちらの機能もさらに悪化すると、それを補うため感染患者の受け入れも開始、昨年末からの第3波、4月からの第4波、そして第5波においては患者の急増を受けて重症病床もその都度増床させ、通常機能を維持した上でコロナ病床をフレキシブルに運用する体制を確立しました。現在、政府はさらに感染力の強いウイルスの出現に備えて、第5波ピーク時よりも3割多い病床確保を目指しており、当院においても兵庫県の定める「感染拡大特別期」には重症を中心に24床を運用することにしています。
コロナ災禍における当院の大きな役割の1つに医療人材の派遣があります。特定機能病院は高度医療の提供のほか、教育、研究機能を担っており、当院のスタッフは平時には幅広い活動をしていますが、今回はそれらの機能の一部を緊急的に地域での対コロナ活動にもシフトさせています。具体的には、重症病床を緊急的に確保した施設への応援、宿泊療養施設での診療、ワクチンの集団・大規模接種会場での医療業務、そして医療機関を含めた事業所ごとの感染対策の策定など、兵庫県や神戸市と十分な連携により、地域における役割を担っています。
当院では昨年12月に職員の3回目のワクチン接種を開始しました。本年2月には地域の皆様の接種も再開する予定です。まずは自らの感染制御を徹底したうえで、患者さんに安全で高度な医療を提供し続けながら、地域の要請にしっかりと対応して、今回の世界的な災禍を乗り越えていくための我々の責務を果たしてまいります。
- 【特集】2022年 新型コロナウイルスをどう考えるか ~神戸大学医学部附属病院の取り組み~
- ● 眞庭 謙昌(病院長)
- ● 溝渕 知司(副病院長)
- ● 黒田 良祐(副病院長)
- ● 宮良 高維(感染制御部長)
- ● 大路 剛(感染症内科 准教授)
- ● 森 康子(臨床ウイルス学分野 教授)
- (順不同・敬称略)