10月号
神大病院の魅力はココだ!Vol.3
まぶたの形成外科 政岡 浩輔先生に聞きました。
皮膚、骨、筋肉、血管、神経…体を構成するさまざまな部分が関係する形成外科。今回は、外来で担当しておられる政岡先生に「まぶた」について詳しくお聞きしました。
―形成外科で治療や手術をする「まぶた」とはどの部分?
基本的に「まぶた」は眼球を覆う器官であり、機能的な問題や見た目の問題がある場合に治療や手術をします。目を開け閉めする時には通常は「上眼瞼挙筋」で上まぶたをもちあげますが、その筋肉が機能しなくなると、おでこの筋肉「前頭筋」を使います。その神経は眼の奥ではなく、耳の辺りから皮膚の下を通ってまぶたに向う神経になります。手術はまぶたに限らずその周辺のいろいろな部分が関わってきます。
―「眼瞼下垂」。患者さんは多いと聞きますが、原因は。
目の奥の筋肉の力が弱くてまぶたが下がり、目が開けにくい先天的な眼瞼下垂やコンタクトレンズ、中でもハードコンタクトの長期間使用に起因するケースがあります。目を開け閉めするには上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)が伸びたり縮んだりしてまぶたの瞼板を上げ下げしますが、結合部分「腱膜」が緩んだり、瞼板から外れたりして開けにくくなります。そして原因として多いのは加齢による筋肉の衰えです。
―どんなことが起きるのですか。
上眼瞼挙筋が衰えると、腱膜がたるみ、瞼板部分が伸びてきます。それと同時に皮膚もたるんできますから、上まぶたを持ち上げるだけでは皮膚が上がらないので、前頭筋を使って一生懸命上げようとします。すると、おでこに横向きの深いしわが入ります。見た目が気になるだけでなく、首や肩までつながっている前頭筋を無理に使い続けると原因不明の頭痛や肩こりに悩まされることもあります。また、まぶたがかぶさってくると視界の上方向が見にくくなり、目の機能にも支障が生じます。
―予防する方法はありますか。治療法は。
ハードコンタクトが原因ならばソフトに変えてみたり、めがねをかけてみたりできますが、残念ながら加齢によるたるみを予防する効果的な方法はないのが現状です。治療としては、腱膜を見つけて瞼板に糸で留め直して固定することで筋肉のたるみを改善する、二重まぶたのラインや眉の生え際で皮膚を切除して持ち上げ、たるみを改善する手術が主な方法です。
―形成外科で治療できる範囲はどう判断するのですか。
瞳孔の真ん中の小さな黒い部分の上1・5ミリを基準に、その下まで上まぶたや皮膚が下がってきているかどうかを見ます。ただし、おでこをしっかり固定した状態で目を開けて判断しますので難しいですね。気になったら眼科や形成外科で診てもらうといいと思います。
―その他、まぶたにはどういった病気がありますか。
下まぶたの症状ですが、瞼板の外側筋肉のボリュームが多すぎてまぶた内側に押され、まつ毛も内側に向く睫毛内反症や加齢による眼瞼内反症でも、まつげが目の中に入って痛むだけでなく、最悪の場合は眼球表面を傷つけてしまいます。
下まぶたが外側に出る眼瞼外反症では目が閉じにくくなります。下まぶた瞼板の下や横の部分の組織が緩んでしまうことが原因です。大学病院ですのでその他にも、治療が難しい場所にできた腫瘍や出来もの、目が閉じなくなる顔面神経麻痺の患者さんも来院されます。
―年齢を重ねると、気付かないところもたるむのですね。
そうですね。年のせいだからと諦めてしまう高齢の方は多いようです。不自由や不調を我慢していないか、周りの人が観察して受診を勧めてあげてください。
政岡先生にしつもん
Q.政岡先生はなぜ医学の道を志されたのですか。
A.実家が動物病院で、子どもの頃から父の仕事を見てきたので、獣医になるつもりだったんです。が、兄が獣医学部に入学し、継ぐ必要がなくなってしまった(笑)。父に「やりたいことをやりなさい」と言われ、悩んでいた高校生の時、先生に医学部を勧められました。
Q.息抜きや楽しみは?
A.今はもっぱら育児を楽しんでいます。おもしろい言動に笑ったり、「こんなことできるようになったのか!」と感心したり。子どもの成長に、日々驚きの連続です(笑)。