10月号
神戸青年会議所 神戸の学生たちの起業を応援したい VOL.8
JCI神戸「青少年育成委員会」では、神戸の学生たちが起業家の話を聞く事業の中に「起業」を考える機会となる「独立型 学生起業サークルETS(Entrepreneur Training Sympathizer)」を立ち上げました。
今年度開催の5回のプログラム内容や今後の予定など、青少年育成委員会の酒井委員長と実際に講師としてサークルの学生らと向き合った総務例会委員長の春名委員長にお話しを伺いました。
学生起業サークル始動
― 青少年育成委員会で独立型起業サークルETS(以下、サークル)の実施に至った経緯をお聞かせください
酒井 6月例会で「マインドイノベーション 〜将来の起業家育成〜」という地元神戸の企業と学生とをマッチさせたプレゼンテーション事業を開催しました。学生たち自ら物事を考え行動し、形にして伝える姿を見て、学生たちのもつ可能性と、今年度理事長の神戸で起業家を増やしたいという思いに通じるものを感じました。兵庫県や神戸市には、起業したい人を後押しする事業がありますが、起業に興味を持ってもらうための施策がなく、起業家を目指す一歩手前の段階で、どう働けばいいのか、働き方について自問自答している学生を支援したく、サークルという形をとりました。
現在、1回生から4回生まで30名弱が在籍してくれています。現在開催されたセミナーの参加者の半数以上が女性だったのには驚きました。
学生の意欲的な反応に期待
― 具体的には、どのような活動内容でしょうか?
酒井 5回のプログラムを開催予定で、テーマに見合った講師をお呼びします。講師の年齢は、40代までの方にお願いし、2回目まで終わりました。
1回目は、初顔合わせでしたので、サークルとしてどういう目的で立ち上げたのか、どう活動して欲しいかなどの情報共有。2回目は起業された方を招き、起業のきっかけ、起業して良かったこと、しんどかったことなど、話を伺いました。パネリストは3名で、JCメンバーから株式会社シナジーカフェを経営されている総務例会委員委員長の春名さん、G―START株式会社(セントラルキッチンやパンジロー)を経営されている川西さん、外部からは美容室を経営されている女性社長をお招きしました。
― 春名さんは、どのような話をされたのですか?
春名 創業のきっかけと良かったことの2点を重点に、最終的には学生が「起業という働き方もひとつの選択肢」として、考えてもらえるように実体験を軸に話しました。
― 学生の反応はいかがでしたか?
酒井 パネリストの方々が包み隠さず本音で向き合ってくれたので、学生にすごく響いたと思います。目の輝き、前のめりに聞く姿勢を見て、こういう積み重ねが大事なのだと実感しています。ただ、この時世なのでZOOMでの開催となり、できればリアルで聞きたかったという声がありました。質疑応答の時間に15分、終了後もルームを15分開放しましたが、もっと色々聞きたかったと、その後も質問をもらっています。
春名 私が想定していた質問は、「どれくらい稼げるのか」「寝る時間はあるのか」といった表面的なものだろうと思っていました。実際は、驚くほど現実的で具体的な質問が多かったです。しかも、女性の方が積極的で。直接起業とは結びつかないように思える学生生活の過ごし方や今学んでいることが将来起業に役立つのかなど、真剣そのものでした。
来年度は学生主体へ。神戸JCはサポート制度で支援
― 3回目以降は、どのような予定でしょうか?
酒井 当初は、次回の3回目に公益財団法人ひょうご産業活性化センターが開設している「起業プラザひょうご」の見学を予定していましたが、緊急事態宣言の影響で見学ができなくなり、5回目に日程をずらしました。そのため9月末に予定している3回目は、学生からの声が多かった学生同士の意見交換会をします。
4回目は、2名の講師をお呼びする予定です。1名は、主な取引先は東京ですが本社は神戸にある企業を経営されている方です。ワークライフバランスの変化に対応した、今どきの働き方をされています。もう1名は地元有名調味料メーカーの取締役にお願いしています。会社の中にいながら、どのようにイノベーションをおこしたのか、会社員でも新しいことができること、そこから新たな需要が生まれることを話して頂く予定です。
5回目の起業プラザひょうごの見学時には、学生たちがどのようなことで起業したいと考えているのかそのプランを発表し合い、考えの甘いところを指摘し合うディベートを予定しています。まだ調整中ですが、実際に起業プラザでオフィスを借りている起業家に入ってもらい、経験談やアドバイスがもらえればと考えています。この経験は、次年度以降のサークル活動で、自分の考えをアウトプットし、意見をもらったり、自分の中で改善したりできる、いい機会になるはずです。
― JCは単年度事業ですが、次年度以降も継続していかれるのでしょうか?
酒井 今年度は私たちが主導していますが、来年度以降は学生同士で話し合い運営することを前提に学生を募集しています。ただ、限界があると思うので「サポーター制度」の導入を進めています。協力していただける団体・会社をリスト化し、学生が話しを聞きたいとか、こういうことをしたいという相談があれば、できることは無償で協力するという条件で登録を呼びかけていきます。
春名 素晴らしい制度ですし、持続していかないといけません。また、神戸の企業として、意欲のある学生と対話する機会は大切だと思っているので参加します。
― 学生募集は経営学部や経済学部が中心でしょうか?
酒井 応募のほとんどが先生からの告知なので、経営・経済を学んでいる学生が多くなっていますが、これから学生同士で広げてもらうので、バリエーションに富み面白さが増してくると思います。学生募集の窓口は、LINEに開設しています。
神戸は起業に適している
― 今、起業される方が増えていると聞きます。JCI神戸の正会員で起業家の方はどれくらい居るのでしょうか?
春名 正会員のうち、お勤めの方が一定数いますのでそれを差し引いたうえでの割合は、年度によって割合は変わりますが、起業家とそうでない方の割合は同程度ほどかと思います。事業内容のおもしろいところでは、オンラインでの旅行業をされている人がいます。他には、眼鏡のオーダーメイドやSNSのマーケティングなど、多岐にわたっています。
― 神戸は先取の事業にチャレンジできる素養がある街といわれますが、実際に感じたことはありますか?
春名 子どもの頃から周囲に外国人が多く、輸入食品屋が数軒ある環境の中、違和感なく過ごしてきました。神戸の街は多様性を受け入れる器を持ち合わせています。一方で、すごくトラディショナルな面もあるかと。例えば、ファミリアさんのような神戸を象徴する老舗企業があります。子どもの頃に通学で使っていたファミリアのバッグを、大人になり子どもができた時に譲り渡したという話はよく聞きます。神戸の保守的な面での魅力です。多様性と伝統・文化、これを両立できている街なので、正当な評価を得られる起業には向いた街だと思います。
― 神戸JCの先輩には起業して成功されている人も多いですね。
酒井 そうです。ありがたいことにOBの方々も私たちの活動に目をかけ、相談にのってくださっています。サポーター制度は、在神企業であれば加入ができますので、経験を生かし学生たちも応援してあげて欲しいです。近い将来、神戸からどれだけの起業家が誕生するのか楽しみです。