2021年
8月号
8月号
⊘ 物語が始まる ⊘THE STORY BEGINS – vol.11 作家 久坂 部羊 さん
新作の小説や映画に新譜…。これら創作物が、漫然とこの世に生まれることはない。いずれも創作者たちが大切に温め蓄えてきたアイデアや知識を駆使し、紡ぎ出された想像力の結晶だ。「新たな物語が始まる瞬間を見てみたい」。そんな好奇心の赴くままに創作秘話を聞きにゆこう。第11回は作家、久坂部羊さん。
ペンとメス…〝二刀流〟で切り込む製薬業界の光と影
医師とMR、作家と編集者の関係…
医師兼作家という独自の視点から、日本の医療問題に真正面から切り込む硬派な小説を数多く手掛けてきた。新作「MR」も、新薬やワクチン開発、その販売に絡む〝医療の闇〟を描く医療小説だ。
「とにかく読者に楽しんで読んでもらいたい。エンターテインメントとして。こんな目的を明確に持って書いたのは初めてですね。もちろん医療がテーマですので、最新の医学、薬学の情報などを楽しみながら読んで得ることができるよう心掛けて書きました」
製薬会社の「MR」が主人公。MRとは、医薬情報提供者(メディカル・リプレゼンタティブ)の略。医師と交渉し、新薬やワクチンを販売する営業マンのことだ。
「長年、医師としてMRに接する機会は多く、製薬会社にもMRなどの知人は多い。実は、この小説の構想は約8年前から温めてきたのですよ」と語る。
その構想が生まれたきっかけとは?
(戸津井康之)
久坂部 羊(くさかべ よう)
1955年大阪府生まれ。小説家・医師。大阪大学医学部卒業。大阪大学医学部付属病院にて外科および麻酔科を研修。その後、大阪府立成人病センターで麻酔科、神戸掖済会病院で一般外科、在外公館で医務官として勤務。同人誌「VIKING」での活動を経て、『廃用身』(2003年)で作家デビュー。