2021年
8月号
8月号
木のすまいプロジェクト|平尾工務店|木材編|Vol.2 地ごしらえ
失われつつある日本伝統の建築文化を未来へ。
連綿と受け継がれてきた匠たちの仕事をご紹介します。
地ごしらえ
前回に引いて、平尾工務店が構造材に使用している紀州材を例に、地ごしらえ→植林→下刈り→除伐→間伐→伐採というサイクルで進められる林業の仕事をご紹介します。
地ごしらえとは樹木を植えられるように山を掃除し生育環境を整えることで、1~3月におこなわれます。温暖な紀州とはいえ山はまだまだ寒い時期。しかも地道な作業ゆえに多大な労力が必要で、1haあたり3~4日もかかります。一方で結果が出るのは数十年後…気が重くなりそうですね。
しかし、地ごしらえは造林の根幹となるとても大切な林業の土台。しっかりとおこなわないと良質の木材を得られないばかりか、災害にも繋がりかねない重要な仕事なのです。
木は、根の底に平行石という石をため込み、どんな急傾斜の土地でも地球の面に垂直に育ちますが、そのために自分で重心を調整するので、真っ直ぐに見える木でもどうしても曲がった部分ができてしまいます。それを少なくするためにも、ていねいな地ごしらえは不可欠です。
伐採後に再び苗木を植えて木を育てることを再造林、もともとあった広葉樹林を地ごしらえして建築材用の針葉樹林にすることを拡大造林といいます。日本では戦後、住宅需要を見込んで拡大造林を進めましたが、平成7年までズルズルと続けられ、その面積は全国で約1千万haにものぼりました。これはやり過ぎだったようで、針葉樹林が多くなりすぎて山のバランスが崩れ、放置林や花粉症の増加の要因ともいわれています。