2020年
12月号
12月号
Tadanori Yokoo|神戸で始まって 神戸で終る ⑪
と、いうわけで大阪のナショナル宣伝研究所に入社することになった。神戸新聞社という大企業から、松下電器の関連会社といっても戎橋のたもとにある地下の小さい職場である。給料は多少高くなったかと思うがいくらだったか記憶にない。社長は竹岡リョウ一所長、常務はその夫人の美佐さん。部屋は所長室と並んでデザイナーとコピーライター、事務員がおよそ10人で、カメラマンが一人。神戸新聞社の広々した空間から、いきなり大部屋。
それでも僕を入れて6人のデザイナーの内3人が日宣美会員とは、信じられないほど刺激的な環境である。大阪まで通うのに三つの交通機関を利用する。デザイナーの西尾直さんは大阪の中堅デザイナー、もうひとりの横溝敬三郎は僕と同時に日宣美の会員になった京都芸大出身の一才年長で、日宣美の特選と奨励賞を獲ったバリバリの注目の新人デザイナーだった。
美術家 横尾 忠則
プロフィール
よこおただのり 美術家。 1936年兵庫県生まれ。ニューヨーク近代美術館、パリのカルティエ財団現代美術館など世界各国で個展を開催。旭日小綬章、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、小説「ぶるうらんど」で泉鏡花文学賞、「言葉を離れる」で講談社エッセイ賞受賞。現在、横尾忠則現代美術館にて「横尾忠則の緊急事態宣言」を9月19日(土)〜12月20日(日)まで開催予定。
http://www.tadanoriyokoo.com