12月号
大学病院の美容外科
神戸大学医学部附属病院美容外科 診療科長 特命准教授 原岡 剛一 さん
3つの使命
〝臨床・教育・研究〟を担う
2007年、国立大学の診療科としては全国で初めて開設された神戸大学医学部附属病院美容外科。安心して受診できる診療科として確立するため、教育と研究の役目も担っています。診療科長の原岡剛一先生にお聞きしました。
形成外科の一領域としての美容外科を確立
―神大病院美容外科の特徴は。
形成外科の一領域として美容外科を位置付けていますので、美容外科のスタッフは全員、日本形成外科学会および日本美容外科学会(JSAPS)専門医の資格を持っています。
―開設当時の経緯は。
当時の担当教授が、形成外科の一領域としての美容外科を確立させるには教育も必要。そのためにも臨床だけでなく教育・研究という使命を持つ大学病院で専門の診療科として立ち上げる必要があると考えておられたそうです。
―美容外科を受診される方は「患者さん」ですか。
世間の美容外科では「お客様」とお呼びすることが多いようですが、特別な決まりがあるわけではありません。来院されるお一人お一人から希望や必要なことを聞き取り、私たち美容外科医が判断し、それに基づいて手術を受けられるのですから、私は「患者さん」とお呼びするのが正しいと考えています。
―では、神大病院の美容外科にはどういった患者さんが多く来院されるのですか。
アンチエイジングの患者さんが多いです。また他院で美容手術を受けられて満足できず来院される患者さんも多いですね。美容外科の場合、ゴールを決めるのはご自身です。その理想はなかなか伝わりにくく、私たちが見ても「すごく奇麗にできている」と思えるのに、「もっとこんなふうに…」という希望を持って、調べて大学病院に美容外科があると知り、来院されます。同じ先生にお願いするのがベストですがなかなか行きづらいようですね。そういうときは、前回手術された先生から治療の内容や写真など、頂ける情報を全て送っていただき、参考にしながら改めて治療を始めます。
患者さんの希望聞き取りと、自身で考える時間を十分に
―得意とする分野は。
やはりお顔の手術が主で、目の周辺や鼻、お顔全体のたるみなどです。
―乳房手術も多いのですか。
もちろん豊胸手術のような、一般的な乳房の形を整える手術にも対応しています。お顔に比べてそれほど多くはないのですが、アンチエイジングでいえば乳房下垂が原因の様々な症状で悩んでおられる方など。見た目の問題だけではない場合が多いですね。
―「紹介状が必要では?」「予約が取れないのでは?」など思って敷居が高いのですが…。
紹介状は必要ありません。患者さんお一人お一人に十分な時間を取りたいと思っていますので、「今すぐどうぞ」というわけにはいきませんが、予約がすごく取りにくいということもありません。
―ゆっくり相談に応じていただけるので、決心してから受診する必要はないのですね。
そうです。ただし、大学病院の場合、重篤な患者さんが多くおられます。美容外科も手術室を共有していますし、より安全に手術ができるよう全身を管理する麻酔科の専門医に時間を取ってもらっています。患者さんが納得するまで時間をかけ、ご自身で考える時間も十分に取らせていただいていますので、手術予約後のキャンセルがないようご協力をお願いしています。
―患者さんのほとんどが女性ですか。
男性の患者さんはまだ少ないです。いろいろな仕事をしている同期の男性から、「覇気のない老け方をすると人前で話をするときに不利を感じる」というような相談を受けることが最近多くなりました。美容外科の男性に対するアピールも必要かなと思いますね。
誰にも訪れるエイジングに
人生を通して寄り添う
―満足されたときの患者さんは表情も全く変わるのでしょうね。
はい、手術後の患者さんが部屋に入って来られるときの嬉しそうな明るいお顔を見るのがこの仕事のやりがいです。残念ながらいつもそういうわけにはいきません。私は気が弱いので、ドアが開くのをドキドキしながら待っています。
―心掛けておられることは。
まず手術の安全です。そして、美容外科に対する不安を払拭することです。エイジングは全ての人に訪れます。平均寿命は延びているなかで、楽しく元気に全うするために、安心して受診できる美容外科でなくてはいけません。大学病院が率先して進めようと、取り組み途上です。
―先生が医学の道に進み、形成外科を専門にされたきっかけは。
国語や算数より理科が好き、文字を書くより絵を描くのが好きで、子どものころから医者になりたいと思っていました。学生のころは外科か小児科かなと思っていましたが、実習で生後3カ月の赤ちゃんの手術を見てびっくりしました。成長するまで何度か繰り返す必要はありますが、赤ちゃんの小さな体にする手術が、これから80年ほど続くこの子の人生をハッピーにする。この衝撃がきっかけで形成外科の道に進みました。
―美容外科に興味を持たれたのは。
形成外科にはがん患者さんの乳房再建があります。これは生活に大きな支障を来したり、命に関わったりする機能を再建するわけではなく、見た目の問題ですが、少なくとも私の患者さんは皆さん明るい。形を極めることで、こんなに人をハッピーにできる。大きなやりがいを感じるようになりました。
―理想とする美容外科医は。
若い方が予防のように「アンチエイジングのため」と来院する方がいますが、その時点ではお断りします。10年後、20年後…〝アンチ〟といっても必ずしも年齢と戦おうというわけではなく、人生を通してエイジングにずっと寄り添っていける美容外科医が理想です。私自身も年を重ねるのでどこまでお付き合いできるか分かりませんが(笑)。
―笑顔で送る人生のお手伝いですね。大学病院の美容外科がすごく身近に感じられました。
神戸大学医学部附属病院
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