3月号
輝く女性Ⅲ Vol.7 LAUT PHOTO 代表 フォトグラファー梶 敬子さん
インタビュアー・三好 万記子
人気料理サロン「ターブルドール」代表の三好万記子さんがホスト役となって、輝いている阪神間在住の女性にお話を伺うシリーズ。
おもてなし上手な三好さんとの対談から、どんなオイシイお話が飛び出すことでしょう。
今回、お話を伺ったのは…
LAUT PHOTO 代表 フォトグラファー 梶 敬子さん
「写真を撮られることって悪くない」と一人でも多くの人に感じてもらいたい
その人の魅力を最大限に引き出す、巧みな表現力。カメラの技術はもちろん、楽しい会話に、光の射し加減、背景など、あらゆることを気にかけ、最高の瞬間を切り取るポートレート撮影の天才。その確かなカメラアイと抜群の描写力に魅了され、プロフィール写真やモデル撮影、家族写真をお願いする人が後を絶たない人気フォトグラファーです。
…最高の瞬間を切り取って撮影される梶さん。本日は私が(笑)、梶さんの人生について少し切り取ってご紹介させてもらえればと思います。まずはカメラとの出会いから教えてもらえますか。
学生のとき、親戚のお兄さんから貰ったカメラで撮影をするうちにその楽しさにハマっていきました。ただ父も堅い仕事に就いていましたし、先行きが見えないフリーカメラマンになるという選択肢はない!(笑)と、大学卒業後は企業に入社。初ボーナスでカメラを買ったり、カルチャースクールのカメラ教室に通ったり、フォトジャーナリストの吉田ルイ子さんが好きで、彼女の異国を写したフォトエッセイを買っては“素敵だなぁ”と憧れを募らせていました。その後、退職し、貯めたお金で1年間、サンフランシスコとLAへ留学、現地の学校で写真を本格的に習いました。
…それがフォトグラファーになられるスタートですか?
いえ、まだです(笑)。LAから帰国した時はバブルの真っ只中で、カメラの仕事よりも「海外の色々な場所に行ってみたい」という想いの方が強かった。それで西宮のアンティークショップに勤め、数百万円のお金をもって商品を海外に買い付けにいくバイヤーのお仕事に携わっていました。ところがそのショップが閉店してしまうことになり、これからどうするのか?と真剣に考えて、やはりカメラマンの仕事に就きたいという結論にたどり着くんです。お店のオーナーさんから紹介いただき、3社のスタジオでアシスタントを経験したのち、独立しました。プロとして必要な機材や設備も持っていなかったため、当時一人暮らしをしていた彼氏の家の一室を暗室として使わせてもらうことにしました。私が現像している間は決して扉を開けてはいけないというルールを勝手に作って(笑)。その彼氏というのが主人です。大学の卒業旅行で行ったバリ島で出会ってから10年ほど付き合って結婚しました。以来、彼は内装の仕事、私はカメラ、と仕事での接点はあまりないものの、お互いを応援するカタチでずっとやってきた経緯があります。
…旦那様はプロとして歩き始めた梶さんの一番の理解者だったんですね。独立後、またたく間に人気フォトグラファーの地位を確立されました。梶さんの写真は人物や料理など、被写体に関わらず、「最もいい瞬間」を「最もいいポジション」で撮影されることで一目置かれています。
独立前に師事していた澤雄司先生の影響が大きいですね。とってつけたような嘘の構図ではなく、撮るものを中心に、背景からも暮らしが滲みでるようなスマートでカッコイイ写真を撮影する。それには「自分自身、日々の暮らしを疎かにしないこと」が大事と教わりました。例えば、ワインはソムリエナイフで男性に開けてもらいなさいとか。女性がレバーを両方に押し広げるバタフライ型のワインオープナーで空けるのはみっともないと。きちんとした暮らしを普段からしていると、いざワインの撮影をするとき自然とソムリエナイフを添えることができる、そこに嘘やわざわざのフォトスタイリングはないんです。
…20歳代の若いときに素晴らしい人生の師匠に出会えたことは大きいですね。
澤先生からは写真の撮り方やノウハウの学びも多かったですが、撮影への想いやフォトグラファーとしての生き方を学びました。今でも被写体の一番、素敵な瞬間をいかに切り取るかということを常に考えて撮影しています。私に与えられる限られた撮影時間のなかで、相手がふっと素になられる瞬間があるんです。ポージングではなく、アハハハと心から笑われる一番いい表情をとらえることができたときは、心のなかでちっちゃなガッツポーズをとっています(笑)。
…女の私でさえ、梶さんが撮られた女の人の写真には惚れてしまいます(笑)。また最近は男性、写真撮影を一番嫌うであろう若い男の子達の写真や、ファミリーフォトも人気ですね。
「写真を撮られるのが嫌」とか「今、撮影しなくてもいつか先で…」とおっしゃる方も少なくありませんが、写真はいつでも撮れるわけではないんです。今しか撮れない写真は、いつか先では撮れません。机の奥にしまっておくだけでもいいから今、撮って、また先のときでも撮って、どんどん撮影して時を保存してほしいですね。写真館で緊張して嫌々撮影するのではなく、自然体でその方の最高の瞬間を撮影することで、「写真に撮られることも悪くないな」と思ってもらえる、私にしか撮れない写真を提供していきたいです。私自身、本当はもっと素敵な女性になりたいのですが(笑)、そこを目指すのではなく、素敵さへの憧れは被写体に求めていくべきだと。自分にないからこそ、その方の素敵さに気づき、出会えるのだと思っています。
…10年前からカメラマンをめざす人、撮影が好きな人に向けたフォトレッスンも手掛けておられます。
スマホやSNSで誰もが自分の作品としての撮影を楽しみ、発表できる時代となりました。そんな状況のなかでアシスタントを経験してフォトグラファーとなった、今の年齢の私だからこそ出来るフォトレッスンとは何か?と考えました。手段やテクニックばかりに走らずに、撮影空間や環境の作り方とか、背景や光の入り具合や光がつくる影などの大切さをちょっと知ってもらうことで、撮影の面白さや楽しさを感じてもらえればと思います。私のレッスンは少人数制ということもあり、来られる方皆さんがとても仲よくなられるのも特徴です。カメラを通して、人と人がつながっていく、そんな仕組みも作り出せれば嬉しいですね。
…カメラを通した表現は得意だけれど、それを言葉で説明するのは難しいというカメラマンさんが多いなか、梶さんは想いを伝えることがお上手だと思います。ギラギラと押しつけるのではなく、ほんわかと伝える。生きるパワーをもらえたような気持ちに満たされる、ちっちゃな太陽のような存在ですね。これからも多くの人の光り輝く瞬間を切り取り、心が満たされる写真を撮り続けてほしいと思います。
三好さんからの質問コーナー
Q.ハマっているグルメや気になるお店はありますか。
A.風や光を感じることができるテラスが大好きな自称“テラサー”。頑張った手料理を召しあがれ!と気負ったものではなく、もっと気軽に集まって自宅のテラスで自由に飲み食べするホームパーティがお気に入り。ワインのお供は、クレソンにトリュフ塩とオリーブオイルをかけたり、平日に仕込んでおいたディップやリエットをバゲットに塗って食べたり。テラスが心地いい季節まで待てず、寒さ対策のストールまで揃えているほど、筋金入りのテラサー!!
三好 万記子(みよし まきこ)
株式会社ターブルドール 代表取締役
神戸女学院大学卒。パリに3年間滞在中、フランス料理を学ぶ。ル・コルドン・ブルーにて料理ディプロマ、リッツ・エスコフィエにてお菓子ディプロマを修得。帰国後、西宮市・夙川にて料理サロン「Table d’or」主宰。また出張料理人としてケータリングも展開、料理はもちろんディスプレイを含むトータルコーディネートに定評あり。企業へのメニュー開発、レシピ提供など、「食」を幅広くプロデュース。二児の母。