3月号
心の深くに届く医療を提供する 神戸東の基幹病院
「甲南医療センター」オープン!
心の深くに届く医療を提供する
神戸東の基幹病院「甲南医療センター」オープン!
一般財団法人 甲南会 常務理事 甲南医療センター院長 具 英成 さん
「全ての人に等しく最善の医療を」という画期的な理念を持って平生釟三郎氏によって創立された「甲南病院」。その遺伝子を引き継ぎながら、新たな時代の、新たな使命を果たすべく、2019年10月1日「甲南医療センター」としてスタートを切った。2017年の院長就任以来、ハード・ソフト両面で新病院開設プロジェクトに携わってこられた具英成さんにお話を伺った。
第1期工事が安全に完了し、安堵。感謝の意を表す
―甲南医療センターオープンおめでとうございます。まず、今の心境をお聞かせください。
安全に第1期工事を終え、竣工を迎えられたことに安堵しております。丘陵地を切り開き、2016年4月に構台を設置する大規模な土木工事から始まったこの難工事を無事に終えていただいた竹中工務店をはじめ工事関係者の皆さまに感謝の意を表したいと思います。現在、第2期工事が進んでおり、2022年4月、480床グランドオープンに向け、改めて気持ちを引き締めているところです。
―新病院のハード面は。
5階建ての南館、地上7階、地下2階の本館が完成、PET-CTやIVR-CTなど最新鋭の医療機器を導入し、380床を有する新病院としてオープンしました。本館地下および周辺に103台分の駐車場を整備し、旧館取り壊し完了後にはエントランス前までシャトルバス乗り入れスペースを設けます。本館屋上や病棟からは紀伊半島から明石海峡まで360°の眺望が見渡せます。時期がきましたら皆さまに開放いたします。神戸を象徴する樹齢200年の楠の大木をはじめ、敷地内の緑を残した環境が患者さんの心を癒すことと思います。
―記念式典も開催されましたね。
近隣開業医の方々、関係方々をお招きし、院内職員も含め約650人が集う竣工式典・祝賀会を10月26日、ホテルオークラ神戸で開催いたしました。式典には、久元喜造神戸市長、置塩隆神戸市医師会長、神戸大学から藤澤正人医学部長、平田健一附属病院長、神戸市会議員の安井俊彦氏、竹田統住吉学園理事長にご来賓としてお越しいただき、ご祝辞を頂戴いたしました。祝賀会は杉村和朗神戸大学副学長のご発声で始まり、お招きした芦屋市出身のジャズピアニスト松永貴志さんのライブステージで、和やかな懇親の場を締めくくりました。
平生先生の武道の精神に通じる心技一体を忘れずに
―新しい理念・行動指針は。
創立時に掲げられた「営利本位に陥らず全ての患者が名医の治療や手術が受けられる患者本位の医療の追求」は遺伝子として受け継いでいます。その延長で新時代に全職員がどのような医療を目指すのか?時代は変わっても人の手で接する最善の医療を追求し、心技一体で心の深くに届く質の高い医療を提供するという思いを、常に自らに問いかけながら行動しようというものです。私達はともすれば忙しくなると、人に対してつれない態度を取ってしまいがちです。新しい行動指針ではそのような時こそ医療人は思い留まり、心の深くに届く医療をいつも忘れずに実践して欲しいという願いを込めています。建物が立派になっても、このような心がなければ良い病院にはなれません。
―リーダーとして全職員の思いを一つにするために心掛けておられることは。
まず自分自身がフットワーク軽くやるべきことに取り組み、できるだけ多くの関係するスタッフを巻き込み一緒に進めること。もちろん中には心無い行動をとる職員もいるかもしれません。「人としてどうかな?」と感じた時には「それであなたの人生を貫いていけますか?」と分かりやすく説得するようにしています。ただしいつも弱い者いじめにならないように気をつけています。やるべきことをやらない人には厳しく、大学時代から今に至るまで私が「見込みがあり伸びて欲しい」と思った人ほど厳しい自己研鑽を期待しています。
―新たな診療科も開設されたのですか。
全29診療科のうち、循環器内科、緩和ケア内科、腫瘍血液内科、救急科など9診療科を強化し、脳神経外科、産婦人科、歯科口腔外科、呼吸器内科・外科、泌尿器科、形成外科の7診療科で医師常勤体制を整えて開設しました。
―救急受け入れにも力を入れていますね。
行動指針の二つ目に「不断の救急医療を全職員で全うします」と揚げ24時間365日、救急車を受け入れます。2018年度、救急の役割を担っていた六甲アイランド病院で2794台、甲南病院で1183台、計3977台の救急車を受け入れました。2019年10月から12月までの3カ月間、両院で既に1410台を受け入れています。ネックはこの急峻な坂でした。救急車が東西・水平方向にではなく、南北・垂直移動するのだろうかという不安もありましたが、3カ月間で従来の約1・5倍のペースで増加し、新病院が徐々に信頼を築きつつあると思っています。
―他にも新しいことが始まるのですか。
神戸市の厳正な審査を受けて許可を得た新しい看板がお披露目しました。もう一つお知らせしたいのは、ゆるキャラの誕生です。「ドクターこうにゃあ」とナース「ミナミちゃん」をはじめ、スタッフみんな合わせて「コーニャンズ」。皆さんよろしくお願いいたします。
優秀な人材確保をはじめ、ソフト面の充実をさらに推進
―院長に就任されてからソフト面での整備を進めてこられましたね。
2018年に甲南大学・甲南女子大学・神戸薬科大学と共に立ち上げたコンソーシアムは東灘区役所の支援を頂きながら、地域医療に関わる人材育成と、公開講座による地域住民の皆さんの生活習慣病改善・疾病予防活動をさらに推進しています。スタッフについては神戸大学医学部附属病院の全面的バックアップを頂き、優秀な人材を送り込んでいただきました。私の専門の外科をはじめ、29診療科の医師はもちろん、看護師、薬剤師、放射線技師などメディカルスタッフのトータルな人事交流を進めています。
―優れた人材の確保で成果が上がっているのですね。
神戸大学医学部出身の学生、初期臨床研修医の間では当センターは、希望病院のトップクラスに入っているようです。今年の新規募集では9人の定員に、神戸大学出身17人を含む国立大学出身35人の応募があり嬉しい悲鳴を上げているところです。さらに近畿地区700人のm3.com(医師向け医学・医療情報サイト)会員へのアンケート「働きたい病院」トップ30では、神戸市立医療センター中央市民病院に続き兵庫県内では唯一、当センター(2019年9月13日現在「甲南病院」)が11位にランクインしています。学生や若い医師は情報に敏感ですから、当院に集まってきた優秀な先生方の下で「勉強したい」「働きたい」という気持ちが既に浸透し始めているのでしょうね。
―今後に向けて。
2年後のグランドオープンでハード面は一段と充実します。立派な建物と設備にふさわしいソフト面での充実を図り、さらに効率的に運用して、東灘区に留まらず、灘区や芦屋市も含めた住民の皆様が安心して自分の身体を託せる、神戸の東の基幹病院として役割を果たしていきたいと考えています。
―市民の心強い味方として、今後ともよろしくお願いいたします。
具 英成(ぐ えいせい)
1977年神戸大学医学部卒業、同学外科学第一講座に入局し、附属病院・市中病院で外科医として勤務。2007年から神戸大学肝胆膵外科学教授、2017年から同学名誉教授、甲南病院(現甲南医療センター)にて院長・常務理事として診療と経営に携わる。日本消化器外科学会名誉会長、日本癌治療学会名誉会員、日本消化器病学会功労会員、日本外科学会特別会員、日本肝胆膵外科学会特別会員などを歴任
一般財団法人甲南会 甲南医療センター
神戸市東灘区鴨子ヶ原1-5-16
TEL.078-851-2161(代)
http://kohnan.or.jp/kohnan/