6月号
縁の下の力持ち 第12回 神戸大学医学部附属病院 光学医療診療部
低侵襲治療の領域でも重要な役割を担う内視鏡
検査や診断ではお馴染みの内視鏡ですが、光学医療診療部には各科から専門医やスタッフが集まり、
低侵襲治療の領域でも重要な役割を担っています。
―光学医療診療部とは?
豊永 各診療科で内視鏡を保守・管理するのでは非常に効率が悪いですね。そこで中央に集約し、主に消化器内科と呼吸器内科、一部、循環器内科から専門医が集まり、内視鏡を使う診断と治療を行っているのが光学医療診療部です。
―内視鏡とは?
田中 細長くて曲がる管から光を当てて映像を拾ってきます。狭いところや細いところ、内臓裏側の見えないところまで入っていけるというメリットがあります。皆さんがよくご存じの、食道から胃、十二指腸までの検査に使われる上部消化管内視鏡、大腸の検査に使われる下部消化管内視鏡、肺の検査に使われる気管視鏡などがあります。手術で使う腹腔鏡も当診療部の技師が保守・管理しています。
―カメラが撮影するのですか。
豊永 胃カメラと呼ばれていた頃は、管の先の小さなカメラでフラッシュ撮影をしていましたが、グラスファイバーが発する光が反射して画像撮影ができるようになりました。しかし、1人か2人でしか見ることができず、画像も鮮明とはいえないものでした。さらに進歩して今は、同じく光を発しますが装着したビデオカメラが電子信号を送信し、モニターに映し出された映像をたくさんのスタッフで同時に見ることができます。
―どんな病気を発見するのですか。
豊永 私たちは主に消化管の腫瘍を専門としていますが、消化管の炎症や、胆のう・膵臓系の病気、呼吸器系の肺がんなど、グループに分かれて担当しています。内視鏡越しに器具を挿入し組織の一部を取って良悪性を診断したり薬剤を組織に注入したり、いろいろな処置ができるようになっています。
―低侵襲治療もできるようになったのですね。
豊永 治療分野での役割が非常に大きくなってきています。ループ状の器具でポリープを切るような処置は検査と同時に可能ですし、先端に付けた小さな電気メスに高周波電流を流して熱を発生させ腫瘍を切り取るような治療は、まずは細胞検査の結果を待ち、担当医や外科の先生とも相談の上、入院での治療が必要です。
田中 内視鏡治療は患者さんの負担が少なく、体に傷を付けることがないので入院期間も短くてすみます。全ての患者さんに適用できるわけではありませんが、早期の悪性腫瘍では有効な治療手段です。
豊永 領域がどんどん広がり、いろいろな器具を使う技術を高め、難しいケースでも結果を出すのが私たちの役目です。やるべきことが増えるぶん、やりがいも大きくなっています。ただし、勇気ある撤退も時には必要ということを日頃から心掛けています。
―先生方はなぜ医学を志し、中でも内視鏡専門医に?
豊永 全ての患者さんが満足できる最良で最新の医療を提供したいと意気込んで医者になりましたが、一人の力では限界があると悟りました。ちょうど内視鏡が治療の領域へと大きく発展し始めた80年代後半、少しでも理想に近づけるのではなかと、絞り込むことにしました。
田中 観察がメインだった内視鏡の領域が、私が学生のころには治療へと広がっていました。これはやりがいがあると専門医を目指しました。
―忙しい毎日だと思いますが先生方のストレス解消法は?
豊永 経験から学んだのは、全てを自分で抱え込まずスタッフを信頼して任せる。田中先生にも私が苦手な仕事をお願いして大きなストレスをかけていると思います(笑)。
田中 ストレスはさほど感じていません、元々感じにくい性分なのかな(笑)。強いて言えば、太陽の下、できるだけ体を動かすようにしています。
―消化器内科専門医として病気予防のアドバイスは?
豊永 1年1回は血液検査と、上部内視鏡、便潜血検査で異常が認められたら下部内視鏡の検査を受けていただきたいですね。これだけでも病気のリスクは軽減できるはずです。