2019年
5月号
5月号
神戸のカクシボタン 第六十五回 海沿いの街で製造される創意工夫の加工魚
写真/文 岡 力
日本の朝食で欠かせないものと言えば「焼き鮭」。我が家では四世代に渡り切り身をお取り寄せしている。
昔ながらの風情漂う垂水廉売市場。その一角にある「山下商店」は塩干、乾物一筋66年の老舗店舗だ。最近では口コミで人気が高まり北海道から沖縄まで全国的にファンを持つ。また各界の有名人もその味を求めて足繁く通う。
名物の「紅鮭」は、北海道やチリといった国内外から仕入れた逸品。それを手際よく鱗をひき捌いていく。丁寧に水洗いした後は塩打ち。そうする事で生臭さがなくなり更に旨みが増す。味付けは、甘塩、中塩、辛塩の3段階。他にも自家製の本サワラみそ漬けやサンマ開きも絶品である。
店主の山下利彦さんにお話を伺った。「常連の方が親子でお越しになられます。昔は辛塩を好まれましたが最近は甘口傾向です。若い方は、バター焼きにするみたいです。それぞれの食べ方がありますね」。「私は、皮が大好物です!」と伝えたところ「クマと同じですな」と笑われた。調べてみるとアラスカのクマは栄養価の高い皮を好んで食べるらしい。身の部分は、他の動物に巡り自然界では喜ばれているみたいだが家内からはひんしゅくをかっている。
近年、再整備が進み街の景色が変わろうとしている。激動の中、昔ながらの製法とホスピタリティでこれからも海沿いの街から全国へご馳走を届けていく。
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載・レギュラー「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「大人の社会見学」(大阪スポーツ)「Oh!二度漬けラジオ」(YES-fm)