5月号
兵庫県のANDO建築探訪 ⑤ ロック・フィールド 神戸ヘッドオフィス/神戸ファクトリー 神戸市東灘区 2005年完成
神戸発のそうざいメーカー「ロック・フィールド」の神戸本社・工場は少し変わっています。30,000㎡を超える建物は、じつは“リサイクル”の建築なのです。元は巨大な物流倉庫でした。それに構造補強を加え、下階を工場、上階をオフィスに大改造しています。“リサイクル”といっても、元の面影はありません。既成の金属パネルが覆いつくす全長160メートルの外観に、光庭型の中廊下、屋上の水庭など、他にはない個性のある建築です。
最初、ロック・フィールドを率いる岩田弘三さんから、「1995年の震災後に放置されたままの物流倉庫がある。もったいないので、これを生かして本社をつくりたいのだが…」と相談を受けました。見てみると確かに、躯体もしっかりしていて、潰すのは“もったいない”。「是非、活用しよう」と意気投合し、ユニークなプロジェクトが実現しました。
岩田さんとは1970年代半ば、北野町につくった《ローズガーデン》にテナントで入られて以来の付き合いです。その後、ロック・フィールドの成長に伴い、静岡、東京の多摩川、そして神戸と、工場を一緒につくってきました。設計への要望は「働く人にやさしく、地域の自然と共生できる環境づくり」で一貫していて、いずれも、職員食堂が一番見晴らしの良い場所にあります。保育所も完備されています。特に4期にわたる静岡工場では、風力発電やビオトープを取り入れた浄水施設、生ごみのコンポスト化など、環境保全のシステムがトータルに考えられています。
岩田さんからの毎年の冬の贈り物は、工場敷地内で従業員が育てる次郎柿です。人もモノも大切に、時間をかけて育てていく――神戸本社・工場の“リサイクル”のコンセプトは、いかにも岩田さんらしい選択でした。
■ロック・フィールド
神戸ヘッドオフィス
神戸市東灘区魚崎浜町15−2
建築家
安藤 忠雄