3月号
わがまちの魅力を“語りべ”活動で再発見:平成♪語りべ劇場(シアター) 2014 in わがまち神戸
都市の文化や歴史を、オリジナル脚本による語りと生演奏、映像で紹介する「平成♪ 語りべ劇場(シアター)」。1994年に旗揚げ公演を行って以来、大阪を中心にさまざまな地域の魅力を伝えてきた。このたび初の「神戸公演」が行われるにあたり、総合監修をつとめる栗本智代さんにお話をうかがった。
―栗本さんは、大阪ガス㈱におつとめです。この「語りべシアター」を手がけることになったのはなぜですか。
大阪ガス㈱には、将来の生活や社会のあり方を多面的に研究し、社内外に情報発信することを目的としたエネルギー・文化研究所があります。研究員として配属された際、「一人の生活者として世の中を見つめなさい」と言われ、何を研究しようか悩んでいたとき、たまたま元禄時代の大阪の地図を見せていただく機会がありました。それを見ると、今でこそ大阪の中心・梅田ですが、その当時は船場(せんば)が商売の中心で、梅田あたりはまだ泥田と野原だったのですね。そこで大阪のまちの変遷に興味を持ち、研究を進めたところ、大阪は歴史もあり豊かな伝統文化がありながら、それらがないがしろにされているのではと感じたのです。たこ焼きやコテコテのお笑いなど偏ったイメージが先行し、古い文化がほとんど伝承されていないと。とはいえ、大阪の人々がその歴史や文化を知っていなければ伝えようがありません。そこで、まちの物語を堅苦しい講演ではなく楽しくお伝えできないかと考えてスタートしたのが、音楽や映像を使った「語りべ劇場」でした。自分で歌を作詞・作曲したり、俳優たちによる演劇を取り入れたりしながら、さまざまなステージを企画してきました。あわせて、まちの物語を語り継ぐ人を養成する「語りべ養成講座」を開講したり、『曽根崎心中』の道行きをたどるといったフィールドワークも開催してきました。
―今回、神戸で初めての公演とのことですが、何をテーマにされるのですか。
神戸は、明治の開港によって、外国人とともに海外の文化も同時に取り入れてきました。そこで入ってきた文化に、神戸ならではの付加価値をつけて発信されているものが多いです。さまざまな文化が共存してきた歴史や、あるいは葛藤の積み重ねが、今日の神戸の魅力につながっているのですね。チョコレートをはじめとした神戸ブランドのスイーツも一例です。またおしゃれな街並みで知られる旧居留地で、明治期から残る唯一の建物が、阪神・淡路大震災で全壊した後、見事に再生している、そんなことにもスポットを当てています。
また、漫画家・手塚治虫が描いた『アドルフに告ぐ』には、明治から大正期にかけての神戸の風景や、ドイツ人と(当時の)神戸っ子の交流などが事細かく描かれているのですが、ご存知でしたか。音楽演奏では、神戸ゆかりのジャズをはじめ多彩なジャンルの曲を、ピアニスト兼音楽監督をつとめる宮川真由美による、オリジナルの編曲でお届けします。
今回の公演にあたり、改めて神戸について学び直しました。異文化を素直に取り入れ、共生してきた神戸人のふところの深さも感じましたし、いろいろな人々の交流や苦労がにじむ歴史を重ねて今があるのだと感動を覚えました。新たな目線で描いた語りべによる「神戸」。市民の皆さまには神戸の魅力を再発見・再認識していただけると思いますし、まちづくりに関わっておられる方には、今後の活動のヒントにもしていただけるのではないかと思っています。
【公演内容】平成♪ 語りべ劇場(シアター) 2014 in わがまち神戸
3月19日(水)19:00開演
会場 神戸新聞 松方ホール
(JR神戸駅より徒歩約10分)
料金 1,000円(税込) ※未就学児は入場できません
◆ご入場には事前予約が必要です
お申し込み・お問い合わせ<㈱ライトアイ・笠原>
TEL.06-6647-8243 http://righteye.jp/
主催:大阪ガス㈱、㈱神戸新聞社