2015年
5月号
「ポリオをなくそうチャリティーコンサート 世界をつなぐ」。2015年3月8日、うはらホールで開催

世界の子どもたちにポリオワクチンを!

カテゴリ:文化・芸術・音楽

国際ロータリー第2680地区 2014-15年度ガバナー
滝澤 功治 さん

国際ロータリーが、世界中の子どもたちのためにポリオ(急性灰白髄炎)撲滅の中心となって活動していることをご存知ですか? 30年以上にわたる活動の結果、ポリオフリーまで〝あと少し〟のところまでこぎつけました。

ポリオ撲滅に取り組むロータリークラブ

―ロータリークラブがポリオ撲滅の活動を始めたのは。
滝澤 1970年代、国際ロータリーでは伝染性疾患で苦しむ世界中の人たちを助けようという活動が盛んになりました。中でもポリオは多くの子どもたちがウィルスに感染し、下肢の麻痺などの後遺症が残ったり、命を落とすこともある伝染性疾患で、世界で毎年35万件の感染があるといわれていました。そこで79年9月、フィリピンで生後3カ月から36カ月の子ども約600万人に対して、5カ年計画でポリオワクチン投与活動を始めました。国際ロータリーがポリオ撲滅に取り組んだ第一歩で、大きな成果を上げることができました。85年に国際ロータリー80周年を迎えるにあたり、「ポリオ・プラス計画」を発表し、86年7月から89年6月までの3年間をキャンペーン期間として寄付を募った結果、目標額の約2倍の2億4700万ドル(約270億円)が集まりました。
 また国際ロータリーは、88年にWHO(世界保健機関)、ユニセフ、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)とともに、GPEI(世界ポリオ撲滅推進計画)の発足にも携わりました。

―日本国内のロータリークラブも活動に参加したのですか。
滝澤 日本中のロータリアンが積極的に取り組み、86年7月から91年6月までをキャンペーン期間として、5年間での募金総額40億円を最終目標に掲げました。結果的に、目標額をはるかに超える49億円の寄付金を集めることができました。

―ポリオ撲滅の成果はどの程度上がっているのですか。
滝澤 2014年に確認された感染は413件、35万件から99%も減少しました。世界中の国や地域で次々にポリオフリーを達成し、日本でも早い段階でポリオ根絶を実現しました。昨年1月には、WHOがインドのポリオ根絶宣言をし、現在も感染が続いている国はアフガニスタン、ナイジェリア、パキスタンの3カ国のみです。中でも政情が不安定なパキスタンでの感染が多く、14年の413件のうち300件以上を占めています。内戦や紛争で国境を越えて移動する難民が増え、他の国へウィルスが流入して感染が広がる可能性があるため、世界中の地域でポリオを完全に撲滅するまでには、まだ少し時間がかかると思われます。

ポリオ撲滅のための活動は、自分たちの手で

―第2680地区の主な活動は。
滝澤 2011年に第2680地区主催のチャリティーコンサートを兵庫県公館で開催しました。第1部では、WHOメディカルオフィサーでポリオ等感染症対策を担当されていた、国立感染症研究所の中島一敏氏をゲストに、ロータリアンの兵庫県立こども病院院長、丸尾猛会員、丸山小児科医院院長、丸山義一会員、コーディネーターに神戸大学大学院保健学研究科教授、中園直樹会員(所属等は当時)を交えてパネルディスカッションを実施しました。
 第2部では、ロータリアンによるコンサートを実施しました。バンド・3つの合唱団出演後、ソプラノ歌手の飯田美奈子会員、縁の音楽家やピアニストが素敵なクラシックの世界を繰り広げてくれました。そして今年3月、2回目となる「ポリオをなくそうチャリティーコンサート 世界をつなぐ」を、東灘区のうはらホールで開催しました。このコンサートのメイン奏者のサックスプレーヤー佐藤恭子さんは、姫路中央ロータリークラブの冠名奨学生第一期生としてアメリカのバークリー音楽大学に留学した元国際親善奨学生です。日本各地で演奏活動されているのですが、関西ジャズ協会会長の大塚善章さんを中心とするゴールデンシニアトリオと共演したいというお話をいただき、「それならばぜひチャリティーコンサートで!」と実現したものです。ジャズドラマーの田中ヒロシさんも加わり、素晴らしい演奏を披露していただきました。パンフレットなどでの広報のほかに、後援の神戸新聞等でも事前に紹介記事を掲載いただき、当日はロータリーメンバーだけでなく、一般の方も含め約500名の来場者に演奏を楽しんでいただきました。

―これからのポリオ撲滅運動への、第2680地区としての取り組みは。
滝澤 国際ロータリーの2013―18年ポリオ撲滅戦略計画では、必要な資金は55億ドルとしています。現在、40億ドルは確保できていますので、全世界でまだ15億ドルが不足しています。少しでも寄付を募ることがまず第一です。当地区の各ロータリークラブが地域で開催するイベントや奉仕活動で募金を呼びかけていただくよう要請していきます。
 しかし、お金を出しさえすればいいというものではありません。やはり、チャリティーコンサート開催のように自分たちで汗を流して活動し、ポリオ撲滅の大切さを広く知ってもらうことが重要です。さらに、ロータリークラブでポリオ撲滅に力を入れているという事実を皆さんに知ってもらうことも、必要なことだと思っています。

―今後の広報活動には、ぜひ協力させてください。本日はありがとうございました。

「ポリオをなくそうチャリティーコンサート 世界をつなぐ」。2015年3月8日、うはらホールで開催


元国際親善奨学生でサックス奏者の佐藤恭子さん


ヴィブラフォンの鍋島直昶さんとジャズドラマーの田中ヒロシさん


ベースの宮本直介さんとピアノの大塚善章さん。鍋島さんと3人合わせて「ゴールデンシニアトリオ」


コンサート当日は約500人の来場者が演奏を楽しんだ


ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団が、寄付上乗せでロータリーとWHOを支援


滝澤 功治(たきざわ こうじ)さん

滝澤 功治(たきざわ こうじ)

国際ロータリー第2680地区ガバナー
1951年生まれ、岡山県出身。京都大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後、司法修習を経て神戸で弁護士を開業。兵庫県労働委員会会長、神戸簡裁調停委員。1983年神戸須磨ロータリークラブ入会。国際ロータリー第2680地区米山奨学委員長、情報研修委員長、ガバナー補佐などを歴任。2014より現職

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