2月号
神大病院の魅力はココだ!Vol.50 神戸大学医学部附属病院 小児科 堀之内 智子先生に聞きました。
一般の診療科や小児外科の先生方と協力し、赤ちゃんや子どものあらゆる病気に対応する小児科。今回は、堀之内智子先生に、ご専門の腎臓の病気、また最近は小児にも多い炎症性腸疾患についてお話を伺いました。
―小児科での診療対象の患者さんは?
初診の患者さんであれば、中学生までというのが目安ですが、継続診療でもう少し年長の患者さんもおられます。学校との連携が必要な場合などは中学卒業後も引き続き小児科で診療したり、成人の診療科と併診をしたりすることもあります。
―小児のすべての臓器のあらゆる病気に関する内科ということですか。
基本的には小児のすべての臓器を対象にした内科です。ただし、神大病院小児科には小児循環器専門医がいませんので、県立こども病院をはじめ専門施設にお願いしています。小児がんの手術については小児外科の先生をはじめ、整形外科や脳神経外科、消化器外科など成人の診療科の先生方に担っていただき、術前、術後の治療を小児科が担っていることが多いです。
―腎臓に関して、小児にはどんな病気が多いのですか。
大きく分けると2つあります。ひとつが生まれつきの病気で、腎臓の形や機能に異常が出るものや遺伝性腎炎などがあります。例えば腎臓のサイズが小さくて自ずと機能も不十分という場合や、サイズは普通でも中の「ネフロン」という機能する部分の数が少ないという場合です。また、腎臓が片方しかないというケース等もあります。それに加え、腎臓から膀胱、尿道へつながる部分の異常もあります。腎臓の形には異常がなくても内部に構造異常がある遺伝性疾患もあり、代表的なものにAlport症候群という病気があります。最近の研究では100人に1人の割合で原因になりうる遺伝子のバリアントを有することが分かってきましたが、現時点では患者さんを治癒に導く治療は存在しません。できるだけ早期に発見し、予後が改善されることが知られている腎臓を保護する治療を積極的に行っています。
―もうひとつの、生まれつきではない腎臓の病気とは?
腎臓が途中でうまく機能できなくなる病気です。腎臓から本来は漏れ出してはいけない蛋白が大量に漏れてしまうネフローゼ症候群があり、どの年齢でも発症しますが2歳から6歳前後が多く、主に体が急にむくむという症状が出ます。初期治療としてステロイドという薬を使うと、患者さんの8割から9割程度で一旦は尿蛋白が消えます。しかしその後、3分の2程度の割合で何回も再発してしまうという問題があり、免疫抑制剤や生物学的製剤で再発を抑える治療を並行して行う患者さんもおられます。同じく尿に蛋白が出る病気には急性腎炎もありますが、これは溶連菌などの感染症がきっかけで一時的に起きることが多く、完治が可能なケースがほとんどです。
―ネフローゼは何が原因で起きるのですか。
なぜ起きるのかは長年、謎のままだったのですが、最近、自分の組織を攻撃してしまう自己抗体が関与していることが分かってきました。ネフローゼの患者さんには腎臓の蛋白が漏れ出ないようにするために一番重要な分子「ネフリン」に対する抗ネフリン抗体ができているという論文が2021年にハーバード大学から発表されました。実際に日本のネフローゼの患者さんで、抗ネフリン抗体がどれぐらいの割合で陽性なのか、陽性の患者さんは治療が効きやすいのか、再発時にネフリン抗体が出るのかなど、まさに今調べているところです。お子さんのネフローゼ患者さんは大人に比べてネフリン抗体の陽性率が高い傾向にあり、測定することで蛋白尿が出たときにネフローゼか否かを迅速に診断できる可能性があります。また、経過観察中に抗ネフリン抗体が見られたら再発を早期に発見できたらいいなと思っています。簡便に抗ネフリン抗体を測定して、治療方針の決定に活かし、世界中の患者さんにより良い治療を提供できるよう研究に取り組んでいます。
―腎不全で透析治療が必要になることもあるのですか。
ネフローゼで腎不全になるのはほんのわずかです。多いのは先天的、遺伝性疾患で最後の手段が透析になるケースです。お子さんの場合、技術的には血液透析も可能ですが、血液を一旦取り出すという非生理的な状況下ではお子さんの成長が妨げられます。ちゃんと栄養をとれば成長が可能な腹膜透析から始めるのが一般的です。しかし長期間続けると腹膜が傷んでしまいます。できるだけ回避できるように治療をしてあげたいと思っています。
―小児でも腎移植が治療方法のひとつなのですか。
神大病院では小児の腎移植に泌尿器科の先生方が熱心に取り組んでくださっています。腎臓提供に関しては社会の変化もあり、生体腎移植だけでなく献腎移植も増えてきています。移植手術後の将来が長い子どもさんの場合は、一回の腎移植で人生を全うできるケースは少なく、二次移植が必要になったときに初めてご両親の腎臓を移植することも可能ですので、献腎移植は患者さんにとって大きな意味があり、本当にありがたいことだと思っています。
―炎症性腸疾患は小児でも発症するのですか。
潰瘍性大腸炎やクローン病は元々、大人に多い病気として知られていましたが、最近はお子さんでも発症し・診断されています。理由はよく分かっていませんが、生活様式や食生活の変化が影響しているのかとも考えられています。主な症状としては、一般的な感染性の腸炎でも起きるような下痢や血便、腹痛です。それが長い間続くと慢性的な炎症が起きている炎症性腸疾患の疑いがあります。お子さんの場合は診断までの時間がかかり、体重が増えない、身長が伸びないといった成長障害がみられて診断がつくケースもあります。小児科医としてはちゃんと知って、鑑別に挙げておくべき疾患のひとつです。
―診断に必要な検査は?
炎症性腸疾患は内視鏡検査をしなければ診断がつけられません。神大病院では、安全でお子さんにも優しい内視鏡検査を提供できるよう、内視鏡のエキスパートである消化器内科の先生がたと小児外科、小児科が協力して小児内視鏡センターを開設しています。例えば県立こども病院で炎症性腸疾患の疑いがあると診断された患者さんの検査も当院で引き受けています。
―県立こども病院とは密に協力体制を取っているのですね。
成人の診療科との連携が必要な大学病院が得意な領域は引き受け、逆に小児専門の集中治療PIC‐U管理が必要な場合などはこちらからお願いしています。また、こども病院に限らず近隣の専門医療施設とも協力体制を取り、院内でも各専門科の先生方と小児科が連携をとりながら、お子さんに最良の治療を提供できる体制を整えています。

堀之内先生にしつもん
Q. 堀之内先生はなぜ医学の道を志されたのですか。
A. 中高生のころ将来を真剣に考えたとき、一生を捧げるのなら人の命や健康を守ることかなと思い医学部進学を決めました。
Q. 小児科を専門にされたのはなぜですか。
A. まず子どもが好きで、学生のとき、小児医療センターで入院している子どもたちと遊ぶというボランティアに参加して楽しくて、小児科の先生方とも知り合いました。とてもいい雰囲気で、そのまま小児科医を志し、今に至っています。
Q. 日頃の診療で心掛けておられることは?
A. 限られた時間内で、患者さんと親御さんからできるだけ多くの情報をキャッチしてニーズを理解したうえで、こちらの情報を適切に伝えられるようにしています。中には病気そのものや取り巻く環境がとても困難な状況で、根本的にレスキューすることは難しい場合もあ
りますが、様々な方法について私たちはいくつかカードを持っていますので適切に使って対応し、最終的にご本人とご家族で病気と向き合える状況にもっていけるように心掛けています。
Q. 後進の先生方と接するにあたって心掛けておられることは?
A. 小児科全体がチームだと思っていますし、その中で私は腎グループというチームに所属しています。チームとして力を発揮するために大切なことはお互いにリスペクトできること。私自身もリスペクトしてもらえるように頑張らなくていけないと思っています。
Q. ご自身の健康法やリフレッシュ法はありますか。
A. 今まで健康に過ごしてきたので、気を使っていないのが正直なところです。そろそろ考えなくては…。リフレッシュ法はいろいろなジャンルの音楽を聴くこと。基本オタクなんですけど(笑)、今はK-POPにもハマってます。












