7月号
未来を駆ける神戸の新風 VOL.13|神戸の魅力向上との 相乗効果を狙う!
インバウンドも増加し、大阪・関西万博の開催や神戸空港の国際化を控える神戸。
その中で需要が高まるのがホテル業界だろう。そこで今回は神戸のランドマークホテルにこれからの戦略などを訊ねた。
取材したのは、港に浮かぶ「客船」をイメージしてデザインされたスタイリッシュな外観をもち、神戸ポートアイランド博覧会が開催された1981年に開業した株式会社神戸ポートピアホテル。代表取締役社長・中内仁氏に話を伺った。
神戸ポートピアホテル
“ジャパンディ”で最上級のホテルステイを提供
今年3月、クラブラウンジのリニューアルをされました。その狙いを教えて下さい。
コロナ禍を経て、お客様が滞在に求めるものも変化してきました。そのニーズを受けて、滞在中の体験価値を向上させたいという想いと、来年予定されている大阪・関西万博、神戸空港の国際化を迎えるにあたって、海外からのお客様に、“日本のおもてなし”や“兵庫の食の魅力”をお伝えしたいということで、大きなリニューアルに踏み切りました。
プライベートサウナと檜風呂のある客室も新設されていますね。
近年、特に海外で人気の、日本のスタイルと北欧のスタイルをミックスした“ジャパンディ”に注目して「セレブリティスイートルーム」を作りました。
サウナは北欧のものですが、日本の檜風呂とも相性が良いですし、リビングやベッドルームも白木を使って“ジャパンディ”を感じてもらえる作りになっています。室内には六甲山や神戸の海をイメージしたデザインが施されています。ご滞在の際には、そういった日本と北欧との融合の部分も実は見どころです。
他にもインバウンド戦略として力を入れられているところはありますか?
国際セールスチームを立ち上げて海外のツアー会社と商談を行いニーズの掘り起こしなどにも力を入れています。
また、 神戸は日本ゴルフ発祥の地として知られていますが、市内中心部から1時間圏内だけで約100カ所という有数のゴルフ場が多いエリアです。“体験価値の向上”という考え方で、ゴルフツーリズムというものについても、本格的に取り組もうとしています。
観光客数は街の魅力のバロメーター
京都などではオーバーツーリズムの問題なども出てきていますが、神戸の状況はいかがですか?
観光局の方の話だと、コロナ禍前と比べて日本人は100%以上、インバウンドは80%くらい戻ってきているそうです。だから、まだ受け入れの余裕はあると思います。
その中で、オーバーツーリズム対策をヨーロッパでは行っていますが、観光地がウェブ予約制を導入するなど、上手くコントロールしながら対応していかなければいけないとは感じています。
一方で、神戸空港が国際化し、発着便も増えますが、これは“神戸に来たい”というニーズが増えてきた、街の魅力が高まってきたということの現れでもあると思います。また、国際化・増便によって神戸の人も便利になりますので、地域が一体となってインバウンドのお客様を歓迎できると良いのではないかと思います。
人材、ノウハウ、ネットワークを活かしてビジネスチャンスを作る!
神戸空港の国際化も含めて三宮周辺の再開発も進んでいます。そんな環境下での今後の事業戦略をお聞かせ下さい。
当ホテルの一番の強みは、学術会議や国際会議といったMICEなので、しっかりその部分を伸ばしていきたいと考えています。
MICE は、Meeting(会議)、Incentive Travel(報奨・研修旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition(展示会)、Event(イベント)の頭文字をとった言葉ですね。
イベントや会議は、言ってしまえばどこででも開催できることではあるのですが、先ほどの“街の魅力が高まる”という部分と相まって、MICEの前後で神戸観光を楽しんで頂く時間も大切だという考えのもとで強化していくつもりです。
加えて、インバウンドのお客様も増えると思うので、冒頭でお話させて頂いたような努力を続けて、これまで来られていなかったお客様を増やしていきたいと考えています。
結婚相談所など新たな事業展開にも積極的に取り組んでおられるようにお見受けします。
我々の人材、ノウハウ、お客様とのネットワークを活かして、新しい事業にも積極的に挑戦していきたいと思っています。
結婚相談所は、これまで1万組以上のウエディングをプランニングしてきた経験を活かして、出会いからご成婚までをサポートするサービスです。
また、ホテル事業以外の取組みとして、市民広場の指定管理運営も行っていて、イベントなどを通して街の賑わい作りにも取り組んでいます。
こういった活動には、従業員から出たアイデアを採用するなど、従業員が活躍できる環境作りも行いながらホテル事業以外のところでもビジネスチャンスを作っていくつもりです。
最後に、ポートピアホテルにとって神戸とはどういう街でしょうか?
当社の元々の成り立ち、設立した動機は、当時、「神戸という国際都市に相応しい本格的な規模のシティホテルがない」という課題意識でした。設立当初は、街の規模に対して大きすぎるなどといった、周りからの指摘もあったそうですが、地元の行政や経済界にも後押ししてもらいながらここまでやってこれました。その意味では、ホテルを育ててもらった街ですので、「マザーシティ」のように感じています。訪れてよし、暮らしてよし、そう言われる街になるように期待しています。
株式会社神戸ポートピアホテル代表取締役社長
中内 仁さん
昭和41年12月生、神戸市出身。平成元年神戸ポートピアホテル入社。平成8年専務取締役副総支配人、平成11年代表取締役社長総支配人を経て、令和5年代表取締役社長執行役員(現職)就任。日本ホテル協会常任理事、神戸観光局副会長を務める。趣味は、旅行、読書、ゴルフ。
神戸ポートピアホテル
神戸市中央区港島中町
6-10-1
TEL.078-302-1111(代表)
https://www.portopia.co.jp/