11月号

美しきかな ひょうごの文化財|海に向かい壮大なスケールで築造された前方後円墳|第十一回 五色塚古墳(千壺古墳)小壺古墳
明石海峡を一望する高台に位置する「五色塚古墳」は全長194m、後円部125.5m、兵庫県内最大の前方後円墳。第二次世界大戦後は荒れ果てていたが、1965(昭和40)年から発掘調査が行われ全体像が明らかになった。
墳丘は3段に分かれ、推定2200本の「鰭付円筒埴輪」「鰭付朝顔形埴輪」が並べられていた(現在は墳頂でのみレプリカで再現)。これに由来し「千壺古墳」とも呼ばれる。斜面は約223万個、総量2784tの葺石で覆われ、上段と中段に多く使われた黒色の斑糲岩は明石海峡を渡り淡路島から運ばれてきた可能性が高く、相当な大事業だったと推測されている。西側にある直径70mの円墳「小壺古墳」は、同じ規格の埴輪に囲まれていることから五色塚古墳の被葬者との関係性がうかがえる。4世紀後半、海陸交通の要衝に築造され、その規模は築造当時の古墳の中ではトップ5に入るとされることから、ヤマト王権とも深い関りがあった有力者が埋葬されていると考えられる。しかし、埋葬施設の発掘は行われておらず、その人物像に関しては謎に包まれたまま。『日本書記』には「仲哀天皇の偽物の墓」と記されているが、矛盾する点も多々あり、信憑性には欠けるようだ。
発掘調査後は復元整備され1975(昭和50)年、日本初の古墳公園として開園した。古墳の魅力を発信する様々なイベントが開催され、2026(令和8)年春には北側広場に展望テラスを備えたガイダンス施設がオープン予定。重要文化財指定の出土品は一括して神戸市埋蔵文化財センターに保管されている。

明石海峡から、遠くは淡路島まで一望。五色塚古墳(千壺古墳)とその右の小山が小壺古墳

黒色の斑糲岩(はんれいがん・手前)は発掘当時のもので、奥の白色の石材は復元のため九頭竜川から運び込まれた

復元され保管されている埴輪。鰭が重なり合い、墳丘内の空間を守るように並べられていた
五色塚古墳・小壺古墳
神戸市垂水区五色山4丁目1番地
TEL.078‐707‐3131
開園時間 9:00~17:00
休園日 4月~11月/なし、12月~翌3月/月曜(祝日の場合は翌日)、年末年始
入園無料
神戸市埋蔵文化財センター
神戸市西区糀台6丁目 西神中央公園内
TEL.078‐992‐0656












