8月号

石井ふく子 白寿記念公演『かたき同志』
作・橋田壽賀子 演出・石井ふく子
石井ふく子 同志の言葉を胸に
「これからも心と心が通い合う舞台を」
プロデューサー、演出家としてドラマ制作、舞台演出などを手掛けてきた石井ふく子さんの白寿を記念し、今月30日より大阪・新歌舞伎座にて『かたき同志』が上演される。1978年から再演を重ねてきた、作家・橋田壽賀子さんとのコンビによる傑作。新歌舞伎座では12年ぶりの公演となる。
出演者がそろって行われた記者会見には石井ふく子さんも登壇し、作品への思いを語った。
江戸下町の飲み屋の女将・かめと呉服問屋を切り盛りする女主人・お鶴。育った環境も気質もことごとく異なるふたりが、息子と娘の結婚話をめぐって大喧嘩。
「このお芝居は体力がいりますよ」と石井が話す通り、舞台上では壮絶なバトルが繰り広げられる。
前回の公演に続き、かめを演じる藤山直美は、「12年前と同じにはいきませんよ」と返しつつ、「石井先生の演出は、お手伝いさんや女将さん、時には武士もご自分で演技をしてみせてくださる。このように教えてくださる方はもういません。橋田先生のお書きになったセリフも長いし、体力勝負の舞台ですが、お祝いの公演を全員でしっかり務めたい」と意気込みを語った。
お鶴役・高島礼子は、「前回は客席で観ましたが、舞台上のおふたりがとにかくものすごいパワーで闘っていました。いつか自分も演じてみたいと思っていた役のひとつ。石井先生からは、“大変よ”“大変だからね”と言葉をいただいています」
バトルの源には、母親としての子への愛情がある。内容について問われると藤山は、「かめは、苦労して苦労して息子を育てた。でも年頃になると息子は女の子と恋をする。かめは、“盗られた”と感じてしまうんです。本当はおめでたいことなのにね。それぞれの人間模様が温かく描かれています」。高島は、「私たち世代は、仕事や子育てがひと段落して、ちょっと寂しさを感じる微妙な年代。でも一歩動いてみると、その後の人生を共に歩むことのできる同志、仲間ができることもある。“1人じゃないんだよ”というエールを送ってくれる作品」と語った。
石井は、「この席に、共に今作を手がけた橋田さんがいらっしゃらないのが非常に寂しい。年中喧嘩しながら作品を作ってきました」と切り出し、「橋田さんは、家族の話、心と心がどう通じ合うか、ということを大事にして脚本をお書きになっていた。橋田さんの言葉を心にもち続けながら、これからも舞台を作っていきたい」と今後の創作への意欲を語った。
公演中の9月1日、石井は99歳を迎える。

前列左から、高島礼子、石井ふく子、藤山直美 後列左から、込山榛香、金子昇、熊谷真実、木戸邑弥
川をはさんで両岸の町に暮らしていた、ひさご亭と越後屋。庶民的な飲み屋、ひさご亭の女将・かめ(藤山直美)は、一人息子の清太郎が自慢だった。蘭学塾に通い、いずれは医者になり母親を楽させてやろうと言っている清太郎にすべてを賭けて、仕事に精を出す日々。ところがある日、清太郎は医者にはならず飲み屋を継ぐと言い出した。一方、呉服問屋、越後屋のお鶴(高島礼子)は、一人娘のお袖に旗本三男坊の松下源之介を婿に迎えたいと願っていた。しかしお袖には全くその気がないことを知り問い詰めた結果、ひさご亭の一人息子・清太郎に思いを寄せていることを知る。ひさご亭に乗り込むお鶴、息子の勝手さに頭に血が上っているかめ、元々生活の違いから反発しあう土地者同士の上、互いのかわいい息子と娘の問題が合い重なり、真っ向からの喧嘩になってしまう…。
石井ふく子 白寿記念公演『かたき同志』
8月30日(土)~9月21日(日)
作:橋田壽賀子
演出:石井ふく子
出演:藤山直美 熊谷真実・金子昇・
木戸邑弥・込山榛香 高島礼子
会場:大阪・新歌舞伎座
https://www.shinkabukiza.co.jp/perf_info/20250830.html












