3月号

特集 剣菱酒造株式会社|世界中の旅人を、食を、灘五郷で繋ぐ「食楽酒」ツーリズム
剣菱酒造株式会社代表取締役 社長
白樫 政孝さん
500年変わらない酒造り。そしてこれからも
醇則質質則不渝
通常は一般不可の酒蔵見学をこのモニターツアーのために特別に行っていただいた剣菱酒造株式会社。500年変わらない酒造りのことや企業としての歴史、現在の取り組みを白樫政孝社長に案内していただいた。
500年続けてきた伝統の酒造り
醇則質質則不渝
剣菱の酒を愛していただいた江戸時代の文人・頼山陽先生から頂いた言葉です。「不変なことを知っている人間は芳醇な酒を造れる。そういう酒は真実であるから変える必要はない」。頼山陽先生にそう言われたら味は変えられません(笑)。先日、「幼いころに亡くなったお父さんが好きだった剣菱を二十歳になった今、飲んでみようと思います。味は変わっていませんか」というお問い合わせを頂きました。「ずっと同じですよ」とお答えしました。剣菱の味を変えないためには、500年続けてきた伝統の酒造りを変えるわけにはいきません。
五家で守ってきた剣菱の酒 循環型企業を目指す現在
実は剣菱酒造は永正2年(1505)伊丹の地で創業以来、経営の失敗、転変地変や政治の影響などいろいろな事情で五家にわたって引き継がれてきました。江戸時代は樽廻船で大量に江戸に送られる「上り酒」の中でも特別な人気を博しました。明治維新後は伝統の製法を守るため妥協を許さず、結果、会社を潰してしまったという逸話もあり、剣菱の味は頑固に守られてきました。昭和に入り、五家目・白樫家が伊丹から灘五郷に蔵を移し仲間入りをすることになりました。
現在、剣菱では社会貢献に取り組んでいます。障がいのある方へ金銭的ではなく、働く場の提供という形でサポートをしています。また、やめられる農家さんの田んぼを引き受けて米づくりを続けています。木材を使う桶や酒樽づくりを自社で行い、全国の酒樽の10%以上は剣菱で作っています。樽を縛る菰をはじめ藁縄づくりを継承し、職人の育成に努めています。日本酒を飲んでいただいたら、自然環境保護と日本文化の保護ができ、障がいのある方の働く機会を増やすことができる。剣菱は循環型企業を目指しています。

ふだんは非公開の剣菱酒造の酒づくりを学ぶ

「醇則質質則不渝」は剣菱を愛した頼山陽の教えでもある

剣菱酒造株式会社代表取締役 社長 白樫 政孝さん