9月号
今月の映画
不思議で奇妙で強烈!
名優たちの怪演
『憐れみの3章』
今年のアカデミー賞で、11部門ノミネート、4部門受賞の『哀れなるものたち』、ランティモス監督最新作が公開。映像もテーマも強烈なインパクトがあった前作に続き、難解さもさらにパワーアップ。邦題から感じる「どういうこと?」感、何のヒントもくれないポスター、観た人によって感じ方は全く異なる(と思う)ので、はっきりとしたネタバレもない。この作品は観るしかない、観てほしい。
今作はつながりのない3つの物語で構成、同じキャストがそれぞれで3つの役を演じている。『永遠の門 ゴッホの見た未来』(18)では、悲しき天才芸術家だったウィレム・デフォー、『ラ・ラ・ランド』(16)であんなに可愛かったエマ・ストーンが、奇妙な世界に生きている。奇妙だけれど、似たような出来事や人間関係は身近にもあるような…。「ね、君たちもだいたいこんな感じでしょ」と、ランティモス監督はおもしろがっているかもしれない。でも正解はわからない。「わからない」をおもしろがる、それでいいかと思う。
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ
出演:エマ・ストーン、ジェシー・プレモンス、ウィレム・デフォー、マーガレット・クアリー、ホン・チャウ、ジョー・アルウィン、
ママドゥ・アティエ、ハンター・シェイファー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
製作年:2024年
原題:KINDS OF KINDNESS
©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
2024年9月27日(金)全国公開
公式サイトはコチラ
吉田修一×森ガキ侑大
愛の裏側を撮る
『愛に乱暴』
原作は吉田修一。『悪人』『怒り』などの映画化でも話題になったベストセラー作家が描く、ある主婦の話。登場するのは皆“ごく普通”の人。家庭でも職場でも、私たちが暮らす日常と同じく、特に悪人がいるわけではない。だからこの作家の小説は恐ろしい。小説に惹かれた監督は主婦・桃子を、“一生懸命に生きる女性”と話している。夫を愛し、家族を大切にし、多くを望まず自分個人の幸せはどこかへしまい込んでしまった。なのに、どうして、愛に乱暴?
桃子役は江口のりこ。お利口な主婦の、そうではない内面を目線一つで表現。夫役の小泉孝太郎は、これまでのイメージを覆しすぎていて驚く。“普通”の姑を“普通”に演じる風吹ジュンは怖い人だ。それぞれに言い分があり、それぞれに共感できる。
監督・脚本:森ガキ侑大
出演:江口のりこ
小泉孝太郎 馬場ふみか
水間ロン 青木柚 斉藤陽一郎
梅沢昌代 西本竜樹 堀井新太 岩瀬亮/風吹ジュン
原作:吉田修一『愛に乱暴』(新潮文庫刊)
脚本:山﨑佐保子/鈴木史子 配給・制作:東京テアトル
制作プロダクション:ドラゴンロケット
©2013 吉田修一/新潮社 ©2024 「愛に乱暴」製作委員会
2024年8月30日(金)公開!
公式サイトは コチラ
※神戸っ子HPに、森ガキ侑大監督のインタビューを掲載中
神戸っ子HPはコチラ
text.田中奈都子