2024年
9月号
9月号
竹中大工道具館 邂逅―時空を超えて|第十二回(最終回)|究極の削り華を求めて ―削ろう会と現代の道具
先日、宮大工の棟梁にいちばん気になる道具を尋ねたところ「やはり鉋でしょうな」。大工をはじめ木を素材とする職人たちは、仕上がりの美しさと精度を左右する鉋の切れ味を吟味してきました。名人が生み出す薄く均一な鉋屑は向こう側が透け、まるで絹のような光沢があります。その美しさに触れた故永六輔氏により「削り華」と名づけられました。
削り華には人を夢中にさせる奥深さがあります。厚み数ミクロン(1000分の1ミリ)という極限に達するには、数々の習練と工夫を要するからです。また鉋の刃を鍛える現代の鍛冶など、道具のつくり手側の切磋琢磨も欠かせない、いわば技の結晶です。
「削ろう会」はプロの職人のほか、手道具や職人に興味のあるアマチュアが集まり、楽しみながら技術交流する団体です。年一回の全国大会では一般的なサイズの寸八鉋と五寸鉋で檜の削り華の薄さを競います。会場では道具の展示販売が行われ、削り手とつくり手が一堂に会して意見交換をする貴重な機会でもあります。先輩職人の卓抜した削りや研ぎの手元に見入り、求める道具を鍛冶職人に語る若い大工たちの姿。2日間の会場は技を極めたい人々の熱気に満ちています。
来春は大阪府枚方、再来年は兵庫県三木での開催が予定され、日本の木造建築や木工芸の技術・文化が次世代へと受け継がれます。
(館長・河﨑 敦子)
竹中大工道具館
TAKENAKA CARPENTRY TOOLS MUSEUM
神戸市中央区熊内町7-5-1
Tel.078-242-0216
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
開館時間:9:30~16:30
(入館は16:00まで)
https://www.dougukan.jp/