4月号
兵庫県医師会の「みんなの医療社会学」 第152回
伊丹市医師会市民健康フォーラム「市民健診に行こう」について
─伊丹市医師会市民健康フォーラムではこれまで、どのような話題を採り上げてきましたか。
片山 フォーラムは平成14年度にはじめて開催されまして、2023年で21回目を迎えました。1回目は840人もの聴衆にご来場いただきまして、「認知症・ケア」をテーマに老人ホームの現場の報告からはじまりました。その後は糖尿病や肝臓など病気や体についての話題が中心ですが、時には「ボストンの街でおばあちゃんが走った」などの体験談もありました。また、AEDを使ってみようといった実演会もおこないました。コロナ禍の2021年には「みんなの感染症対策」をテーマに、正しいマスクの付け方、手洗いのやり方、体温の測り方、ワクチンや予防接種の話をお届けしました。
─2023年のテーマは何でしたか。
片山 「市民健診に行こう」をテーマに、伊丹アイフォニックホールにて10月21日に開催し、約200名もの市民のみなさまにご来場いただき大盛況の中でおこなわれました。
─どのようなプログラムでしたか。
片山 5名の講師による講演をおこないました。第一席は伊丹市立保健センターの保健師、阿南美恵子先生に「受けて安心伊丹市の健診」という演題で、主に特定健診についてお話ししていただきました。特定健診とは高血圧や糖尿病、高脂血症、痛風などの生活習慣病の予防と早期発見を目的とする健康診断であることや、40歳から74歳には受診券が届き、75歳以上の後期高齢者でも後期高齢者保険証を呈示すれば受けることができることなど、特定健診の概要について紹介してくださいました。
─第二席は先生の講演だったそうですね。
片山 はい、私が「腎臓を守ろう」をテーマにお話させていただきました。腎臓の機能はクレアチニンという〝体のごみ〟の数値によって測定することができます。クレアチニン値から糸球体ろ過率を計算し、そのろ過率が落ちた人をピックアップするのですが、特定健診にもクレアチニンと尿蛋白が検査項目に入っていて、腎機能低下の早期発見・早期治療に結びつけています。現在ではさまざまな治療法が出てきていますので、早く見つければ治療することも可能です。
─第三席はどのようなテーマでしたか。
片山 「〝かくれ糖尿病〟を見逃すな!」の演題で、市立伊丹病院副院長の濵口朋也先生にお話をしていただきました。特定健診には空腹時血糖値とヘモグロビンA1cが検査項目にありますが、血糖値だけでは糖尿病を見つけることができません。健診では空腹時の血糖値を測定しますが、これだけでは食後の血糖値はわかりません。一方でヘモグロビンA1c値は赤血球中のヘモグロビンという色素がどれくらい糖と結びついているかを示すもので、ふだんの血糖値が反映されます。基本的にヘモグロビンA1c値が6.0%以上で境界型糖尿病と判定するのですが、正常値の範囲ではありますがその手前の5.6%以上6.0%未満も〝かくれ糖尿病〟の糖尿病予備軍と評価します。というのは、その中の1割程度に食後血糖が高い人がいるからで、食事指導や運動療法を採り入れながら早い段階で糖尿病の予防に結びつけています。以上のような内容でした。
─第四席はどなたの講演でしたか。
片山 公立学校共済組合近畿中央病院消化器内科部長の柄川悟志先生に「大腸がんを早く見つけて早く治そう」というお話をしていただきました。大腸がんはがん検診の項目にあり、便を採って調べます。検査が1回だけですと発見率が50%ほどしかないですが、2回以上検査すると80%以上になりますので、2回連続して検査することが必要です。それにより大腸ポリープを見つけて除去すれば、大腸がんが予防でき、6ミリ以上取れば有益です。ポリープは早期であれば内視鏡で切除でき、特に有茎性=盛り上がっているものは焼いて取ることができますし、無茎性=盛り上がっていないポリープは生理食塩水を注入して膨らませて切除することが可能です。また、大腸ポリープの一部に大腸がんも含まれています。以上のような内容でした。ちなみに伊丹市では国保特定健診や後期高齢者健診の際に、65歳以上の方は無料、65歳未満の方はプラス600円で大腸がん検診を受けられますので、ぜひ検査しましょう。
─第五席はどんなお話でしたか。
片山 市立伊丹病院老年内科部長の伊東範尚先生に「フレイルを乗り越えよう」をテーマにお話しいただきました。フレイルとは健康な方と要介護の間で可逆的な状態のことをいいます。フレイルには身体的フレイル、精神的フレイル、社会的フレイルがあり、これらが相互に関係し、ドミノ倒しのように悪くなって介護が必要になる傾向があります。フレイルの予防ですが、身体的フレイルには継続的な運動が必要です。社会的フレイルや精神的フレイルには、社会との関わりが大切ですので、デイサービスやデイケアを上手に使って社会との接点を増やしていただきたいと思います。以上のようなお話でした。なお、伊丹市の場合、65歳以上の方の国保特定健診や後期高齢者健診で「もの忘れ検診質問票」と「フレイル検診質問票」によるチェックも同時に実施しています。
─2024年のフォーラムはいつですか。
片山 10月26日(土)に伊丹アイフォニックホールで開催予定です。テーマは今回に続き健康診断の第二弾としてがん検診の話題を検討していますが、詳細が決まり次第、伊丹市医師会のホームページなどでお知らせします。ぜひ多くの方々にご来場いただきたいですね。