4月号
今月の映画と本
世界が憧れるスーパースター
エルヴィスと、恋に落ちた14歳。
『プリシラ』
薬師丸ひろ子の『メイン・テーマ』と南佳孝の『スタンダード・ナンバー』。この2曲は、同じメロディに男女それぞれの目線からの詞がついている。ラブソングには想う相手がいて、その相手の前にも同じ景色があり、想いがあるということを気づかせてくれた名曲。
この作品は、2022年公開の映画『エルヴィス』、エルヴィス・プレスリーの物語の、まさに“スタンダード・ナンバー”。元妻プリシラ・プレスリーの回想録に心を打たれたソフィア・コッポラが、彼女の目線で2人の物語を描いている。14歳で恋をした少女がエルヴィスが住む世界に飛びこみ、誰もが羨むおとぎ話みたいな生活が始まる。けれど、結婚生活で生じる苦悩は多くの女性と変わりはなく、彼女は自分の道を探し始める。この物語の中では、スーパースターも1人の男性でプリシラの夫。
ラストに流れるのは、ドリー・パートンが歌う『オールウェイズ・ラヴ・ユー』。プリシラが去る時にエルヴィスが歌ったとか。エルヴィスに歌われたら戻ってしまいそう。
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ケイリー・スピーニー、 ジェイコブ・エロルディ
原題:PRISCILLA 2023年/ アメリカ、イタリア
© The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023
2024年4月12日(金)全国ロードショー
公式サイト
失われつつある
古き良き街並みを訪ねて―
『全国重伝建紀行
[重要伝統的建造物群保存地区]』
市内在住の著者・町井さんは、国内外の街歩きをしながら、古い街並みや老舗旅館、商店街、路地裏などを撮影している。そんな風景、お好きな方は多いのではないだろうか。昔ながらの純喫茶が流行っていたり、“昭和”や“古民家”などの言葉に出会うことも多い。その良さを知る年代にとってはノスタルジーかな、若い年代にはどう見えているのだろう。
このガイドブックは「懐かしいなぁ」にとどまらず、文化財保護の観点から文化庁が選定した価値ある建築物や街並みを堪能することができる。岐阜の『白川郷』、金沢の『ひがし茶屋街』、岡山の『倉敷美観地区』など有名な観光地もあれば、ほとんど知られていない地も。その数、127箇所。時間をかけたら全部行けそうな気がする。この1冊をお供に、日本全国の古い街並みを旅して歩くのもいいかもしれない。
著者:町井 成史 定価:2,420円
発行:東京ニュース通信社 発売:講談社
text.田中奈都子