4月号
出会いと学びの旅から Vol.04
ある脳性麻痺のボランティアから教えられたこと
シアトル市にある赤十字社がボランティアを募集しているという新聞記事を読んで、さっそく応募しました。日本人の応募は珍しかったのか、すぐに「採用」されてシアトル市から車で2時間ほど南にある「レニア・スクール」という州立の巨大な施設で活動することになりました。毎週1回シアトル赤十字社の車で4人が1グループになり、この施設にボランティアとして出かけていきました。男性は私一人で後の3人は女性でした。うち2人は家庭の主婦で、1人は女子学生でした。が、その女子学生には脳性麻痺という障がいがあり、彼女は施設でボランティアとして、入所している知的障がいの子どもたちに学習指導をしていたのです。私は彼女がボランティアとして他の障がいのあるこどもたちのために毎週1回時間を割いて活動をしていることに驚きました。当時の私の頭の中には、その女子学生は脳性麻痺という障がいがあるので、ボランティアのサービスを受ける側であって、サービスを提供する側ではないはず、という思い込みがあったのです。私の単純な頭は混乱しましたが、彼女はボランティアが何であるかを一緒に行動することによって身をもって私に教えてくれたのでした。強い人が弱い立場にある人に、時間や生活に余裕のある人が困っている人のために、健康な人が病気や障がいで苦しんでいる人のために、何か手助けをしてあげる、力になってあげる、のがボランティアという先入観念は根底から覆されました。人は誰かの役に立ちたい、何かの役に立ちたい、という気持ちは障害や病気の有無、生活にゆとりがあるなしに関係なく、誰もが持っているものであり、その思いを具体化するのがボランティアなのだ、ということを学ぶことができました。この赤十字社のボランティアとしての経験が、「アメリカのボランティアのことをもっとよく知りたい」という思いにかられ、シアトルのこども病院でのボランティアに申し込むきっかけになりました。
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