10月号
有馬温泉の泉質|濃度も成分も神がかり
まさに「日本第一神霊泉」
温泉のうち特に治療の目的に供しうるものが療養泉とされており、環境省の指針により主成分ごとに10の泉質に分類されているが、有馬温泉はそのうち8つの泉質で主成分として含まれる物質を含有。
つまり、有馬温泉に浸かると、単純性温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、含ヨウ素泉、放射能泉の泉質を有する効能が期待できるという訳だ。
これだけ多くの成分が含まれるのは世界的にも稀少だという。しかも金泉・銀泉という2つの違う性質の湯が同じ土地から湧出するというのは、かなりレアなケースだ。
金泉には炭酸ガスやミネラルが豊富で鉄分も多く、女性によくある貧血などに効能があることから「婦人の湯」とも評される。また、海水の約1.5倍という高い塩分濃度やメタケイ酸により保温・保湿・殺菌効果が高いので、皮膚の疾患にも良いという。蒸気にはメタホウ酸などの成分が含まれているので、湯気を吸うだけでも健康に良いそうだ。ちなみに、湧出直後は無色透明だが、空気に触れることで鉄分が酸化し、独特の金色へと変化する。
銀泉は新陳代謝を促進し自然治癒力を高めるといわれるラドン、毛細血管を拡張し血流改善に効果がある炭酸ガスをたっぷり含む。成分の濃度が人間の体液より薄いので体内に水分を取り込みやすく、サラリとした湯触り。炭酸成分によりシュワッとしていて、飲むと食欲が増進するという。
このようなお湯が湧くのは、有馬温泉が特殊な温泉ゆえ。東北や九州に多い火山性の温泉はマントルから派生したマグマと地下水が反応して湧くが、有馬は珍しいプレート直結型温泉で、世界一若い=熱いプレートに含まれる海水が地下数十キロで絞り出され、それがマントルにより高温・高圧下で濃縮されつつさまざまな物質を溶かし込んでダイレクトに湧き出るので、金泉は成分豊富で濃厚。銀泉は、地表へと上がる途中で圧力が下がることで金泉から抜けた炭酸ガスなどが、六甲の地下水と反応して生まれる。
塩化物泉
塩分が主成分。保温力が高いのでよく温まり、保湿効果で肌しっとり。殺菌効果もあるので傷の保養にも。
例)城崎温泉 片山津温泉
炭酸水素塩泉
炭酸水素ナトリウムなど炭酸水素塩を多く含む。美肌効果がある「美人の湯」は、この泉質の温泉が多い。
例)川湯温泉 黒川温泉
二酸化炭素泉
炭酸ガスの血管拡張作用により血流が改善され、心臓の負担が軽減されるとされることから「心臓の湯」とも。
例)国領温泉 長湯温泉
単純性温泉
一般的にクセがなく肌にやさしいが、溶質が規定されていないので、温泉によりさまざまな個性がある。
例)湯村温泉 道後温泉
含ヨウ素泉
2014年の指針改定で新たに登場した珍しい泉質。ヨウ化物イオンを含有し、飲用するとコレステロールの低減も。
例)新富温泉 白子温泉
放射能泉
放射能というと危険なイメージだが、放射線量はごく微量で、むしろ細胞を活性化。効能は痛風や関節痛など。
例)三朝温泉 増富温泉
含鉄泉
赤褐色の色が特徴。入浴すれば月経障害、飲用すれば貧血に効能があるとされることから「婦人の湯」とも。
例)花山温泉 長良川温泉
硫酸塩泉
陰イオンの主成分は硫酸イオン。切り傷ややけどのほか、血圧の低下や沈静化、動脈硬化に効果が期待できる。
例)岩美温泉 山中温泉