10月号
コロナ禍で不自由を強いられても挑戦する心は忘れずに
国際ロータリー第2680地区
ガバナー 吉岡 博忠 さん
長引くコロナ禍。国内外ともに混沌とした状況が続く中でも「挑戦する心は忘れずに」と話す吉岡博忠ガバナー。オンラインをフルに活用しながら、今年度の活動を粛々と進める吉岡ガバナーにお話を伺いました。
―伊丹ロータリークラブに入られたきっかけは。
私は大学卒業後、当時の松下電工でサラリーマンをやっていました。その頃、会長の松下幸之助さんは日中友好協会の会長を務めておられ、上海でODAを手掛けるに当たって、私は資材の振り分けをお手伝いすることになり、大阪ロータリーのメンバーとご一緒しました。ロータリーはすごい人脈を持ち、助け合いの精神と友情が受け継がれていることを知り、すばらしいなという印象を持ちました。そして地元に帰って来て、尊敬する先輩から伊丹ロータリー入会を勧められたときにはすぐに「入会します」と返事をしました。
―思い出に残る出会いは。
多くの出会いがありました。中でも印象に残っているのが、伝説のパストガバナー深川純一さん(第2680地区1990~91年度ガバナー)です。日本のロータリークラブに理念を広め、影響を与えた偉大なロータリアンのお一人です。私が実家の郵便局を継ぐために戻って来たとき、深川さんから掛けられた言葉で忘れられないのは、「君は地元では周りの人が頭を下げてくれるから自分からは絶対に下げないだろう。仕事は郵便局長ということだから、そういう立場ではないだろうからね。そんなことでは人間は成長できない。まず謙虚になるということをロータリーで学びなさい」。それに類する言葉は大先輩からたくさん頂き、ありがたいことでしたね。
―伊丹ロータリークラブの主な社会奉仕活動は。
全体での活動としては、1958年の創立当初から続くサンクスギビングデーディナーパーティーがあります。チャーターメンバーがアメリカ勤務時にサンクスギビングデーに招かれた経験があり、家庭的な雰囲気のパーティーが印象的だったということで始められたということです。毎年、兵庫県内の留学生や奨学生、その関係者などをご招待します。日本に来て1年、2年と過ぎるとどうしてもホームシックになりますからね。残念ながらコロナ禍で2年続けて中止せざるをえなくなっています。
―コロナ禍でのロータリー活動の進め方は。
国際的なプロジェクトが全くできなくなったのは致し方ないとして、緊急事態宣言下ではワクチン2回接種で例会参加、それ以外のメンバーはオンライン参加など試行錯誤しながら、できる限りミーティングやプロジェクトを進める努力をしています。それでもやはり、情報や発想の交換は質も量もface to faceには及ばないですね。
―ガバナーとしての任務は。
アメリカで行われるはずだったガバナー研修は全てオンラインになり、本来なら数日間で終了するはずのメニューに11日間かかりました。時差が14時間あり、あちらで気を使って早朝に設定してくださったのですが、こちらは深夜におよび、アメリカへ行かずして時差ボケ状態でした(笑)。県内71クラブの公式訪問は7月から予定通り始め、face to faceの懇談会を実施しています。
―今年度の目標の一つに挙げておられる「不自由を自由に楽しむ」の意味は。
普段できないことに挑戦するのがロータリアンの心の持ち方です。コロナ感染拡大で制約を受け不自由を強いられているなか、ポリオ根絶、地域社会への奉仕を続けることができる環境を整える。そこに目標を置き、挑戦する術を仲間で学び合いながら楽しもうという意味合いです。
―吉岡ガバナーが思うロータリーの良さとは。
人とのつながりですね。情報や考え方の交換をすることで自分自身を高めることができ、さらに人材育成ができるということです。
―ロータリーでの人材育成の考え方とは。
もちろん奉仕の精神を持つ人材を育てるということはあります。その上で、その場その場でのリーダーを育てるということです。例えて言えば、道端に捨てられたたばこを奉仕の精神で拾える人を育てるのは人材育成です。しかし、たばこを捨てない、吸わない人を育てるためのリーダー的な人材を育てるのが、ロータリーが考える人材育成です。
―理想のリーダー像とは。
人は百人百様です。リーダーとしてどんな行動をするかではなくて、リーダーの心がどうあるべきかを知り、自分自身の大きさに合った分相応の心を持ってリーダーシップを発揮することが大切です。ロータリーでは青少年プログラムをはじめ、人材育成のためのプログラムでそれぞれカウンセリングができる人が付きます。こういったカウンセリングは、今のコロナ禍でも一対一のオンラインでも可能ではないかと思っています。
―混沌とした時代、ロータリーの果たす役割は。
世界のロータリーが持っている人的ネットワークは有意義なものだと思います。例えば、アフガニスタンの問題では、タリバンが人道的な支援を妨げることがないよう交渉できる人材がロータリアンの中にいて、約束を取り付けたと聞いています。政府間の交渉では難しい場合も、ロータリークラブがクッション役になれば安心感を与えることができるのではないでしょうか。
―これから重要視するべきことは。
ロータリーには、「紳士・淑女の教育」などという言葉がありましたが、「全ての人々」と言い換えています。女性の入会を拒否しているなどと言われたこともありましたが、慣れないのでどう対応したらいいのか分からなかったというのが真相です(笑)。女性ロータリアンも少しずつですが増えてきています。私たち自身が時代を引っ張っていくという意識を持って、多様性を重要視するべき時代だと思っています。
吉岡 博忠(よしおか ひろただ)
1949年生まれ。吉岡興産株式会社 代表取締役。学校法人大阪学園理事。1990年伊丹ロータリークラブ入会。2004-05年度会長。2017-18年度 伊丹ロータリークラブ創立60周年実行委員長。国際ロータリー第2680地区2021-22年度ガバナー。