2020年
10月号
10月号
神戸のカクシボタン 第八十二回 懐かしの味に出会える 地ソースの聖地「ユリヤ」
写真/文 岡 力
ニッポンの食文化を支える万能調味料「ソース」。国内で初めて製造販売した発祥の地「神戸」には個性豊かなメーカーが点在する。昭和21年創業、長田神社前商店街にある食料品販売店「ユリヤ」には100種類におよぶ地ソースが一挙集結。普段、スーパーでは目にする事ができない銘柄が購入できるとあってファンの間で話題を呼んでいる。
店名は、先代が兵庫区でユリの花卉園芸をしていた事に由来する。戦後、独自ルートで仕入れた食料品や野菜を販売。その後、ご当地にこだわった酒類や加工品を陳列するようになった。現在、取り扱っている神戸の地ソースメーカーは全部で7社。定番の「ばらソース」をはじめ王子公園で孤軍奮闘する「プリンセスソース」や甘酸っぱい風味が特徴の「ニッポンソース」などレトロなパッケージデザインに心が躍る。代表の中島吉隆さんにお話を伺った。「粉もんの街でソースやちょっと変わった食料品を数多く取り揃えております。地元の飲食店や震災がきっかけで神戸を去った方が懐かしの味を求めて購入されます。是非、下町の味をご家庭で楽しんで頂きたいです」。どの商品を購入しようか悩んでいると一目散に推しへ駆け寄り一升瓶を鷲掴みにレジへ向かう常連客の姿があった。しばらくの間、お店へ通い「マイソース」と呼べる相棒を探したい。
■株式会社ユリヤ
神戸市長田区五番町8‐1‐6
【電】078‐577‐0231
http://www.yuriyasauce.com/
■岡力(おか りき)コラムニスト・放送作家
ふるさとが神戸市垂水区。関西の大衆文化をテーマとした執筆・テレビ、ラジオ番組を企画。連載「合間日和」(神戸市消防局監修・雪)「のぞき見雑記帳」(大阪日日新聞)「あての履歴書」(大阪スポーツ)