5月号
音楽のあるまち♬19 自分がやりたい音楽〝ジャズ〟で 聴く人を楽しませたい
ジャズギタリスト 藪下 ガク さん
ロックギターから、ジャズに興味を持ち、大学で音楽を学んだ藪下ガクさん。ジャズギターのプロとして、自分がやりたい音楽を追求し続けています。
―音楽との出会いは?
子供のころ習っていたのはチェロでした。といっても当時はわけもわからず親に連れていかれていました。やがて母が昔聴いていたクイーン等のレコードを聴くうちに、ギターに興味を持つようになりアコースティックギターを弾き始めました。それでチェロはフェイドアウト。中学では友達とロックバンドを組んでいました。ところが、弾きたい曲より流行っている曲を演奏するほうがウケるので、妥協もしていました。高校生になったころには、「本当にやりたいのはこれなのか?」と疑問を持つようになりバンドをやめ、聴く音楽もガラッと変えてみました。
―そこからジャズへ転向?
そのころ偶然、ジャズを勉強したら音楽の幅が広がるという話を聞き、聴いてみようと…。でも何を聴いたらいいのか分からず、まずは〝スタンダート〟ジャズだろうと見つけたCDがハービー・ハンコックの「ニュー・スタンダード」。これが大きな勘違い(笑)。彼は常に時代の最先端をいく人。よく知っている曲なのに、何をやっているのかさっぱり分からず、思ったのは「ジャズって難しいなあ」。
―そこで諦めなかった?
高校2年生のとき、大阪音楽大学のオープンキャンパスで柴田達司先生にお会いしてレッスンを受けることになりました。先生にその話をし、ジャズはその時代に流行ったものを吸収しながら大きくなってきた音楽だからいろいろな形があることを知りました。それから幅広く聴けるようになり、特にジョー・パスやケニー・バレルなどジャズギターの王道を聴き自分もやりたいという気持ちになれました。
―ロックギターとジャズギターはどう違うのですか。
現代はロックもジャズも色々な形があるので一般的な話ですが、楽器の構造が違います。ジャズギターはアコースティックギターと同じ構造で中が空洞になっています。ロックギターは中が空洞ではない木の詰まったギターです。共にアンプに繋いで電気で音を増幅するのですが、中が空洞な分ジャズギターはアコースティックな響きです。僕はこの電気で作られた音なのにアコースティックに聴こえる響きの虜になりました!
―大学卒業後、どのようにプロ活動を始めたのですか。
まず同世代とセッションできる場に出て行き自分を知ってもらい、上の年代の人たちともつながりができ、次第にいろいろな場所に呼んでいただけるようになりました。
―タンゴはいつから?
大学の同期にバンドネオン奏者がいて、一緒にやらないか?と誘われたのが出会いです。曲を聴いて真似したり、タンゴ奏者に会いに行ったり、手探り状態で、当時からかなり時間をかけてきました。
―現在は、後進の指導にも力を入れていますね。
母校の大阪音大、神戸ユースジャズオーケストラ、個人レッスンでも教えています。若い時に教えられることの印象は強烈です。だから教える側は間違ったことは教えられないし、厳し過ぎて音楽を楽しめなくなっても駄目だし、すごく緊張感を持っています。生徒さんが自分自身の鏡のようで、教えながら教えてもらっているようなものです。
―今後については?
たくさんのご縁があり周りの方々からの協力もいただけるようになりました。やっと自分のやりたいことを楽しめる余裕が出てきたと思っています。昨年からオリジナル曲を演奏するバンドをピアノ、ベース、ドラム、ギターの4人で新たに始めました。すると、自分の曲にはテナーサックス、アルトサックスが加わるといいかなと思うようになり、まさかの6人編成に!今後演奏活動にも力を入れていきます。
―ズバリ!自分がやりたい音楽とは?
テクニカルの部分でそれなりのレベルを達成するのはプロとしての使命。それを聴かせるだけでなく、聴く人に「楽しいな」「いいな」と思ってもらえる音楽…ちょっとカッコ良すぎかな(笑)。とにかく聴いてみてください!